愛しいあなたへ
生まれてくる子への影響は妊娠中の母親の食事内容や母体への有害物質などが影響すると思いますが、
今回の新たな研究で、
父親が低タンパク質の食事であると、生殖細胞でエピゲノム変化を誘導し、精子を通じてそれが子供に伝わり、子供の肝臓における遺伝子発現変化とコレステロールなどの代謝変化を誘導することを明らかにしました。
この研究結果を発表したのは、理化学研究所（理研）開拓研究本部眞貝細胞記憶研究室の国際共同研究グループです。
今回の研究では、低タンパク質食またはコントロール食で飼育した野生型の雄マウスをコントロール食で飼育した野生型雌マウスと交配させ、その子どもの肝臓の遺伝子発現パターンを調べました。
その結果、
低タンパク質食の雄マウスの子どもは、コントロール食の雄マウスの子どもと比べて遺伝子発現の変化が見られた。発現上昇した遺伝子には、コレステロール代謝系遺伝子などが多く含まれていました。
一方、
ATF7ヘテロ変異マウスの子どもでは、父親の低タンパク質食による遺伝子の発現変化はありませんでした。
ATF7は、マウスなどにおいて、ストレスなど環境要因によるエピゲノム変化の誘導に重要な転写因子です。
これにより、父親の低タンパク質食が子供に影響する現象にはATF7が必須であることが分かりました。
次に、
低タンパク質食のATF7への影響を調べたところ、父親の精巣の生殖細胞ではATF7がリン酸化され、標的遺伝子から遊離することで、エピゲノム変化が起こっていることが明らかとなりました。
この変化は精子を経て受精卵に伝わり、子どもの遺伝子発現を変化させることが示されたのです。
本研究により、
「親の食事が子供の成人病などの疾患発症に影響する」という胎児プログラミング仮説のメカニズムの一端が解明されたことにより、どのような栄養条件が糖尿病など子供の生活習慣病の発症に影響するかを科学的に解明する手掛かりが得られました。
本成果は今後、より健康的な栄養条件の解明やサプリメントなどの開発につながると考えられます。
また、生殖細胞でエピゲノム変化が誘導される遺伝子群が同定されたことにより、これらの遺伝子のエピゲノム変化を測定することで、次世代での代謝変化を予測することも可能になると期待できます。
研究成果：https://www.riken.jp/press/2020/20200320_1/index.html
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