さいたま市から京都市伏見区に着いた無職41歳犯人は、台車1台、20リットルガソリン携行缶を2缶と、
30センチ以上の刃物6本、ハンマーとバケツを、どこからか用意して、ガソリンスタンドで、ガソリンを40L買った。
午前10時半前後、NHKの取材要請により電子ロックが外されていた僅か1-2時間の間に、
犯人は建物内に入り、バケツに移し替えたガソリンを一階の螺旋階段付近で一杯分を撒いて「死ね」と言いながら火を付けた。
犯人の想定では、刃物を複数所持していたことから、着火後に入り口に戻ってまた20L携行缶からバケツに移し替え、
2階、3階と螺旋階段を使って登って、撒いて行く計画だったのかもしれない。
だが、液体は灯油じゃなかった。
ガソリンだ。
バケツに一杯、およそ6L程だったかも知れないが、想像して見てほしい。
いくら超燃費が悪いスーパーカーですら6Lあれば、どれだけ最高速度で走れるだろうか?
その最高速度で走れた分のエネルギーが、一瞬ですべて解放されて熱エネルギーに変わったのだ。
撒かれてすぐ気化し始め、螺旋階段つたいに登るガソリン。
「死ね」と犯人が叫びながら着火した瞬間、広がる熱エネルギーは空気を膨張させ螺旋階段の気化分も手伝って
爆発的に1階、2階、3階の全ての窓ガラスを叩く。
ビル正面の面積が広いガラスはひとたまりも無く割れただろう。
同じく広がっていく熱エネルギーはこのビルの可燃材を焼き、
割れた窓から吸い込んだ空気で成長した炎を従えながら広がって行く。
2階螺旋階段付近のデスクのスタッフは爆発による衝撃を感じた直後、
酸欠と、全身を炎が舐めて紙や衣類が発火し皮膚が溶ける。
吸い込んだ熱で呼吸する間もなく、ほぼ即死だろう。
成長を続ける炎は更にデスク上の紙類を焼き、燃え広がりながら流れ天井と壁と床を伝い、
生き物のように上へ上へと、隙間を求めて螺旋階段から、割れた窓から次々に上がって行く。
3階でも爆発の衝撃に晒され、残った熱エネルギーの残りが吹き抜け
スタッフは異常に気づく。
既に螺旋階段回りの可燃物から燃え広がっている。
誰もが思った。「逃げなきゃ」
螺旋階段と南のバルコニー側の窓から炎が上がってきてる。
屋上への内階段しか逃げ道は残っていない。
機転が利く者はトイレに逃げ込んだ。
皆が北側壁中央の内階段に押し寄せ登る
酸素が薄い体が重い、人同士が押し合いへし合い身動きが異様に取りづらい…
そこまでだ。
2階から成長を遂げた炎があらゆる壁沿いに登り終え
周囲を焼きながら天井を伝って広がり、逃げるスタッフを追い越し、
このビルの一番高い天井である屋上への扉まで登り詰め渦を巻く。
床と壁面から炎の津波が来る。
炎に巻かれる前に熱で髪と衣類が焦げ始める。肺が焼ける。
運が良ければ、ここで卒倒して意識を失ったかもしれない。
次の瞬間、行き場の無くなった炎がスタッフの上へ降りて来る。
逃げ場など無い。
この数分間で、ビル内は炎が充満し終えた。
煙がすべてを包み覆い隠す。
屋上への扉が開かれる事は無かったのだ。屋上への扉を開く迄の時間は無かったのだ。
●犯人が向かったのが、第1スタジオでなく京都アニメーション本社なら被害はもっと抑えられ、人命がこれほど奪われることはなかった。
●犯人が買ったのが灯油であったなら、屋上への扉は確実に開かれていた。
●電子ロックが解除されていなければ、犯人が建物玄関から侵入するまで時間が稼げた。
●街中に防犯カメラが有れば、40Lものガソリン購入を不審がった店員の通報で足取りを追っていた警察に補足され、
犯人は行く手を阻まれていたかもしれない。
●NHKが電子ロックを解除した予定時刻に到着してカメラを回しているか、電子ロックの解除を撮影班が来てから
スタッフが解除する手筈なら、犯人はこの日の犯行を断念したかもしれない。
●犯人に埼玉からの旅費や、犯行に使われたガソリンや使われ無かった凶器類を用意する資金が無ければテロは起きなかった。
●犯人が2012年にコンビニ強盗で逮捕され、その後に入所した『民間更生保護施設』が更生させてから出所させていれば
テロは起きなかった。
偶然とは思えない、恐ろしい程の狂気の悪運が
幾重にも重なって犯人に味方している…
同じ日の深夜、韓国で日本大使館が入居するビルに、ガソリン入りポリタンク2個、
液化石油ガス20個を積んだ車が、正面入口に突入した。
しかし扉は開かなかった。
犯人は諦め車の中で着火し、爆発炎上した。テロリストはその後、死亡した。