「雑貨の部署から来た木本さんです。皆さん、色々教えてあげて下さい。」



「木本です。よろしくお願いします。」



朝礼時、大主任は40代位の男性を私達に紹介する。




社員以外で男の人が来たのは初めて。




チェッカーとピッキングの配置に固定で入るという事で大主任がつきっきりで教える事になった。


しかし


「えーっもう俺疲れた〜」


さすがに大主任が傍で他の事をしていて少し目を離してた時ではあったが、木本さんは出荷中に何回もしゃがみ込んだり


「あのぅ出荷中、急にお腹痛くなったらどうしたらいいんですかぁ?」


休憩中おばちゃんにそんな事を聞いてきて「そんなの大主任にお願いしますって言ってから抜けなさいよ」と冷たく返されたり。


「ねえねえ、俺さ雑貨に6年居てさ


歳の近いパートの人を捕まえて聞きもしないのに身の上話をしたり



「何なのアイツ!!喋って、サボってばっかり!!所長に言って雑貨に返したらいいんじゃないの!?」


おばちゃん達も怒りまくっていた。


私も前職がブラック企業だからわかるがこういう人間はある日前触れもなく来なくなり、すぐに辞める。


まあまあ、とりあえずは仕事覚えて貰わんとな。」


相次ぐ苦情に大主任は苦笑いで答える。


確かに様子を見るしかない。もしかしたら仕事を覚えたら変わってくるかもしれない。



数日後


「木本さんが体調不良で休みという連絡が来ました。もう居る人数で回さないといけないので俺も出来るだけ作り込みに回りますが、少しだけ手伝いを10時からお願いします。」


朝礼で大主任は木本さんの休みを告げる。



やっぱりな。


私だけではなく皆もそう思っていた。


「このまま来なくなるんじゃないの?てかこんなにキツいって本人思ってなかったみたいよ〜」


「ね。チェッカーだけとかいらないわよ。米取って来ないなら蹴っ飛ばすし」


「来ないなら来ないで他の人寄越して欲しいわ」


おばちゃん達は木本さんに対する不満を口にする。




翌日


何事もなかったかのように木本さんは出勤し、いつになく真面目に仕事に取り組んでいた。


しかし


「高原さん、今から俺と所長と木本さんで会議室で話するから悪いけど棚卸し終わったら帰ってええよ。いつもの場所に表を置いておいて。そんでおかしいとこあったら付箋に書いといてくれたらええから。」


「わかりました。」


「ほなよろしくな。」


「はい。お疲れ様です。」


大主任は私にそう言って棚卸し表を渡すと木本さんと会議室に行った。




私は何も言えず見送る事しか出来なかった。