イきがみ⑦
- 小説 イキガミ (小学館文庫)/百瀬 しのぶ
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頭の中を小鳥が囀りながら飛び回っていた。
瞼を閉じているはずだが光が俺の網膜を焼いているかのように眩しい。
俺は目を開いた。
光が俺の眼球を射抜いた。
驚いて飛び起きた。
朝日だ。日の光が俺を包んでいた。
頭が割れるように痛い。俺は顔をしかめた。今まで何処で何をしていたのか…………。
異臭が鼻腔をくすぐる。ビニールの擦れる音が耳を震わせる。
辺りを見渡した。
ポリエチレンの袋の山。
確実に「ゴミ収集所」に身を横たえていたようだ。
立ち上がる。頭痛は激しさを増す。意識が飛んだ前の事柄を忘れた訳ではなかった。
だが、それでも俺が一番に考えた事…………それは今の時間だった。
ポケットから携帯を………無い。全てのポケットを手でまさぐる。何も入っていなかった。
身ぐるみ剥された…………。
『イきがみ』さえ無くなっていた。
それでも衣服は着けてはいた。
下腹部に手をやり、まさぐってみた。
まだだ。
まだ「発射」はしていない!
俺は走り出した。
何時なんだ!今いったい………
時計。時計。
呟きながら辺りを見回す。
今何時なんだ…
いったい………
通りを駆け抜ける。
閉まった店の暗がりに掛かる時計が見えた。
…………6時50分!!!
嗚呼!
こうなれば通り掛かった女性に………!!!
辺りを見回す。
人っ子一人いない………。
しかし俺はあきらめない!
痛みが駆け巡る頭に思考の命令を下す。
そうだ!駅だっ!駅に行けば、駅に辿り着けば誰かがいるはず!
俺は走ることに全身全霊を傾ける。脈拍が上がり血液が身体中を駆け巡る。頭痛、吐き気が一気呵成に襲いかかって来る。しかし構っていられなかった。
だが俺は駅の場所を知らない。行きはタクシーを使ってここへたどり着いたのだから…………
「駅っ!………駅にいけばっ!」
俺は叫び出していた。
「駅っ!駅はどっちだぁ!!」
大通りに出た。
しかし道行く人は見当たらない。
俺は走り続ける。
すると急に前方の視界が開けた。真正面に建物を捉えた。
あの建物の感じは間違いない………駅だ!駅に違いないっ!
駅にはきっと早めの出社を決め込むOL、にこやかな客席乗務員、朝から元気な売り子のお姉さん、夜遊びを終え始発を待つ女、田舎から早くに上京して来た女、女、女、おんな、おんなあぁぁぁおんなあぁぁぁ……
「おんなあぁぁぁ!!!!おんなあぁぁぁ!!!!」
喉を突き抜けて腹のそこから絶叫した。
駅が間近に迫る。
改札だ。改札から女人が大勢吐き出されてくるはず!!
もつれる足を必死で繰り出す。
「改札!改札!おんな、おんなあぁぁぁ!!!!」
改札へと進む俺は駅の大きな時計を視界に捕らえた。
………… 長針が振れる………12の文字に重なる…………。
その時、
俺の下腹部で何かが弾けた。
《つづく……頼む。後一話だから。》