イきがみ⑤ | human being

イきがみ⑤

イキガミ 6―魂揺さぶる究極極限ドラマ (ヤングサンデーコミックス)/間瀬 元朗
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刻一刻と時間は過ぎて行く。

既に藤本が訪れてから「予定時刻」までの半分までを俺は浪費してしまっていた。

両頬を拭う時間でさえ惜しく感じる。

俺は家を飛び出した。 勿論その手には『イきがみ』を握り締めて。

あてをなく彷徨う時間はない。俺は全神経を思考回路へと移す。
「パートナー」を手に、しかも短時間で………。

その思考の果ては「クラブ」へと辿りついた。
勿論「ホステス」が付くおっさんの盛り場ではない。
ヤングの集う「トレンディ・スポット」…………「ラ」にアクセントの『クラブ』である。
それはこの間床屋で読んだ若者向け雑誌に載っていた記事を思い出したからに他
ならない。
床屋のおばちゃんは俺に「ポパイ」だの「メンズノンノ」だのを必ずよこす。
しかしながら俺が読みたいのは「女性自身」や「女性セブン」なのだ。毎回頼も
うと思うのだが気が引けて躊躇してしまうのであったが今回だけはおばちゃんに
感謝の念が湧いた。

俺は知らず知らずのうちに走り出していた。
呼吸は上がる。しかし構っている時間はなかった。 下腹部に停滞し、起爆の時を
待っているのであろう「ナノカプセル」の存在を意識しつつ、俺は目指す「クラブ」へと向った。

タクシーに乗りそのクラブ「デスティニー」の前に立つ。
この時になって店の名が「運命」とは………。しかし感慨に耽っている時間はな
い。すぐさまエントランスを抜け、料金を支払って店内へと向かう。

耳をつんざく爆音が俺を包んだ。これでは話かけるのも難儀になりそうだ。しか
し店内には若く魅力的な女性が多くいた。


片っ端から声をかけた。
もうちっぽけなプライドなどかなぐり捨て、始めから『イきがみ』をちらつかせ
る。
皆悲しげに『イきがみ』に目を見開いたかと思うと悲しげにサヨナラの手を振る
のであった。

何人に声を掛けたのだろうか………。
張り上げた声に喉の渇きを覚えた俺はビールで潤すことにした。
何気なくストゥールに腰をかけ、琥珀色の液体を流し込む。
すると俺は肩を叩かれた。
振り向くと、歳の頃にすれば二十歳前後の二人組の女性がにこやかに立っていた。

「『イきがみ』持ってるんですって?………見せて!!」
俺は言われるがままに差し出した。

「きゃあ!本物初めて見たあ!…ねえ?一緒に呑まない?」



≪つづく・・・もう引くに引けない。≫