イキガミ①
- イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (2) (ヤングサンデーコミックス)/間瀬 元朗

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ある日、自宅のベルが鳴った。
ドアを開けるとそこには20代半ばと思われる男性がスーツ姿で立っていた。
「市役所、戸籍課の藤本と申します。」
嫌な予感が頭の中を走り抜けた。
何故ならこんな時間に役所の人間が一般家庭を訪れるのは、「あれ」ぐらいしか
思い当たらないからだ。
「何でしょう?」
俺は極めて冷静を装い問い掛けた。
「○○さんですか?」
確実に俺の名である。
「……ええ。」
「○○さん宛の『発射予告証』をお届けにまいりました。」
ビンゴだ…俺は心の中で叫んだ。嫌な予感は的中した。
「『イきがみ』………」
真っ白になった頭が思考する前に口をついて出た言葉だった…。
『イきがみ』………。
「国家繁栄維持法」の名のもと、小学校入学と同時に男子全員が「国繁予防接種
」を義務付けられている。
そのワクチンにはたいした意味はないが、その注射器の0.1パーセントに特殊
なナノカプセルが混入している。
約1000人に1人の確率でそのカプセルを注入された男性は、18歳以上にな
るとある日に血液中のナノカプセルが下腹部で起爆、その刺激によって「発射」
してしまうのである。
その「ナノカプセル」を誰に注入されたかは、国民には知る事ができない。
国民のもとには「発射」の24時間前にその日時が記された「発射予告証」が配
達される………通称『イきがみ』である。
「間違いございませんか?こちらが証明書になります。ご確認ください。」
藤本と名乗った男の声が俺の意識を目覚めさせた。
証明書を受け取る。
そこには俺の写真の乗った『イきがみ』が貼り付けてあった。
藤本は黙って『イきがみ』を見つめる俺をショックで言葉を失ったとみたか、
「これは24時間を有意義に過ごしてもらうための国からの配慮です。あなたの
「発射」を決して無駄にはいたしません。」
事務的な台詞が俺の耳から入って来る。
「承諾書に印鑑を頂けますか?」
俺は居間へと戻り印鑑の入っている引き出しを開け、玄関へと踵を返す。
印鑑を押させた藤本は心持ち安堵の表情を浮かべたかと思った刹那、硬い表情を
取り戻し
「では○時丁度に予告証をお渡し致しましたのでこれで失礼します。○○さんの
勢いあるご発射を心よりお祈り致します。」
直立した格好から、律義に頭を垂れ、そして藤本は静かにドアを閉め、玄関を後
にした。
俺ははっきりとしない意識の中で「イきがみ」を掴んだまま立ち尽くしていた。
≪つづく≫