たとえば君がいるだけで | human being

たとえば君がいるだけで

[A子の世界]


「マジ、超ウザイんすけど。」

A子の最近の口癖だ。
ここは人が溢れている。それでも毎日新しい人が入ってくる。そして毎日消えてゆく人もいる。この人の多さが彼らを呼ぶことをA子は知っていた。

まただ、とA子はうんざりした。もう避けるのもかったるい。目の前をすぎていく彼らの存在を全く無視する。もう今日、この色、この姿を見るのは何度目だろう。A子はそのことに気付いてさらなる虚脱感が重なってくるのを感じた。
A子が無視を決め込んでも彼らは執拗に彼女の前を通り過ぎてアピールするのを止めようとしない。無視をすれば文字通り、手を変え品を変え、その姿を変えて通り過ぎていく。かと言って少し反応でも見せようものなら更に目の前を通り過ぎる回数が増えるだけだった。
今日はもう眠ってしまおう。
そう。
横になるのではなく、全ての感覚を遮断してここを漂う……A子はそう決めたのだった。

そんな彼女もここに来たばかりの時には,彼らの存在に対して興味を感じ、相応のリアクションで応えていた日々もあった。そして誘われるがままに付いて行ったりもした。すると何度か恐ろしい目に遭ったのだった。命に関わるほどの危険にさらされた。そして今その事はA子に彼らの存在が危険きわまりないことを教え、その誘いがまやかしである事を悟った。そしてΑ子は彼らを無視するようになった。
そんなA子でも、心のどこかではまやかしではない、真実があるんじゃないか、いいや、あってほしいと信じている自分がいる事を知っていたが、その考えが浮かぶ度に彼女は自分自身に苦笑し、そして戒めてきたのだった。

こうしてΑ子は今日もここを眠りながら漂っているのだった。







[B子の世界]


「いつか、いつかきっと。」

毎晩、眠りにつく前に想う願いをB子は今日も唱えた。
少女の頃から夢見ていた憧れ。いつかきっと、いつかこの薄暗く人寂しいここから、「白馬に乗った王子様」がきっと私を連れだしてくれる。

いつも変わらない登場人物。新しい人が登場する事も、誰かが入れ替わる事もまず無い。変わらない風景。そして変わらない行動。変わらない生活。毎日変わらず繰り広げられる物語。幼い頃からずっと。毎日。それがB子の住むこの世界の日常だった。

B子は刺激が欲しかった。

B子は幼い頃から毎日のように空想し続けていた。

それは、ある日突然、目の前に今まで見たこともないほどの美しい彼が現れ、初めてで戸惑う私を優しく誘ってくれるのだ。私は戸惑いながらも、きっと飛びついてしまうだろう。毎日夢にみていたのだから。そしてこのチャンスを逃せば次が待っているかどうかなんて解らないから。彼の優しく優雅な導きで私は変わらないこの世界から飛び立っていく。夢見る広い世界へ。
そう。
彼……「白馬に乗った王子様」がここから連れ出してくれる………。


こうして彼女は生きている。











「『管釣り』って魚一杯いるから川より簡単に釣れるんでしょ?」

と思っている全ての人に捧ぐ。


【A子の世界】=管理釣り場 ・【B子の世界】=自然渓流



human being



という例え話をするも、「・・・は、はあ・・・・」的な、りアクション。

もういい。

君にはわかってもらえまい・・・・・。