宮崎あおいはいないけど
す、すみません。思い出しただけで精神のバランスを崩してしまったようです。しかしながらそれだけではなかったんです。
『宮崎あおいに罪は無いけど(前回までのお話) ①
②
③
』
それらの剥製で完全に恐怖に取り憑かれたわたくし。「パックン」(B級と言えば!と一番最初にわたくしを秘宝館に連れて行ったちょい悪オヤジ)はそんな私の状態を知ってか知らずか、好奇心旺盛な小学生のようにさらに進んで行きます。
本気で逆走を考えていたわたくしですが、薄暗いこの建物の出口らしき、光の差し込んでいる所が先に見えていたのでそちらへ一気に進もうかと足を出す決心をしました。
「うわわ、なんだこりゃ…。」
「パックン」は私が陥った状況を「知らず」の方だったようです。
その順路は突然に終焉を迎えているようでした。わたくしが見つけた出口らしき所へ続く通路はベニヤ板の壁で仕切られています。しかしこちら側からはそのベニヤで仕切られた向こう側の空間が見えてしまうのです。丁度バリケードのように板やら鉄パイプで中に行けないように仕切ってあり、倉庫……といったら聞こえはいいですが、要するにいらないものが放り込んである様な状態にしてあったのです。
「ぢゅんちゃん、何あれ??」
バリケードの中をのぞき込みここと指差す「パックン」。
わたくしはバリケードに近付くのを全身の筋肉が拒んでいたので、その場から目を凝らしました。
廃材やダンボール、古い椅子などが雑然と積まれたその中から尻尾から臀部、そして2本の後ろ足が見えています。
わたくしは恐怖で固まった思考回路で考えましたが、勿論確認する気にはなれない上、さらに恐怖が募っていくのを感じました。
「ピ、ピューマとかその辺?」
言いながらも近づいてこないわたくしを「パックン」は既に飽きたと思ったのか、
「さて………先行きますか。」
と促しました。もうこの館から逃げ出したい度full・Max だったわたくしは、相槌もそこそこに踵を返そうとした時、薄暗いその廃材置き場に目が慣れてしまったからなのか、バリケードからもっと奥、ベニヤの壁側に巨大な4足動物のシルエットを見てしまったのでした。
何度か動物園で観たことがあります。人気の動物です。子供でさえそのシルエットで名前を答えられるメジャーな生き物………。でも廃材の中で傾いて立って…いや、置いてありその足の下には板とタイヤ…可動式………イヤッ…イヤア……いや
わたくしはもう発狂寸前でしたので気のせいということにしてここは一気に退散と思いきや、40歳なのにはしゃいでいる横のおっさんが叫んじゃいました。
「うわわ!うわっ!あれ!あれ!………き、キリン!?」
「うおおおおおぉぉぉぉををををーーー!!」
わたくしはとうとう何とか堰止めていた「心のタガ」が粉砕され思考も、いいえ。理性さえも失ってしまいそうな精神の崩壊する音が口をついて出たんだと思います。
一目散に出口へ。しかしながら恐怖に萎縮した筋肉が言うことを聞かずギクシャクとした早足にしかなりません。
「ちょっと、ちょっと、ぢゅんちゃん!!」
40のおっさんの「ザ・たっち」のものまねなど興味はありませんし、このおっさん双子じゃないし、ただの長男だし……
さすがに慟哭しつつギクシャクと出口を求めるわたくしに異常を感じ取ったのか「パックン」は横に並ぶように走って追いついてきました。
「ちょっと!大丈夫!?」
そう言うパックンの顔を見ようと横を向いた刹那。
私の網膜に張り付いたのは 、
ベニヤの壁の上から覗くキリンの顔でした…………

