つりぼり十番勝負《管理釣り場「N」編》③ | human being

つりぼり十番勝負《管理釣り場「N」編》③

美味しい「生餌」を

「ギブミー、ギブミーチョコレート!!」

進駐軍のジープにたかる子供の様に待つ「流れ込み」の上流を捨てて、

「釣りキチ三平」こと『パックン』(持参したクーラーボックスにチョコを忍ばせ「遭難」に備える危機管理能力に

 優れたおっさん)

とわたくし「つ・五平」は下流へ向って釣り降る事にしました。

全体的に上流の餌釣りが影響しているのかとも思われましたが、少し離れるとぼちぼちと「アタリ」が

出てきました。


ファースト・フィッシュは我が手に…………


「バシャ!バシャ!」

はっ!と対岸の師匠を見ると早くも上げた様です。

しかしながらその「偏光サングラス」で隠れた顔に喜びは薄いようです。
恐らく、自分なりの「これかっ!」的な釣りが見えていないようです。


わたくし「五平」はここ二戦の大敗で強くなった「アルミのハート」で平常心を保ち、こまめな

「ルアーローテーション(ルアーを換える事)」をし続ける事に徹したのです。

そして師匠が上げたすぐ後に自分の中のファースト・フィッシュを釣り上げる事に成功したのでした。


「ボウズ(一匹も釣れない事)」を免れた安堵感でさらに下流へ向って釣り降る。

一方の「三平師匠」と言えば何やらポイントをクルクルと変え続け、何やら落ち着きがありません。

「ザ・平常心」のわたくし「五平」。

師匠への心配りも忘れません。

程なく近寄って、いかがですかと声を掛けるのです。


「うーん……渋い。」


渋谷哲平っすねっ!」


と「和やかギャグ」を繰出すわたくし。



「………。渋い。」


スルーです。皆様。


もちろんわたくしだって爆笑はとれるとは思っちゃいません。
ニヤリとも、くだらないとも言わずリアクションさえない。


ただただ、魚の活性の悪さを訴えるのです。


しかしながら本日のわたくしは「Mr.平常心」。

聞こえなかったのだとして更なる「和やかギャグパートⅡ」を繰出すのです。


渋井陽子ですね!……声低っ!!」

少しばかりの大きな「ズッコケ」アクションも交えながら…………。





「……………。どうしようかなあ………。」



竿をもってさらにポイント変える為に歩き出す師匠。



無視です。皆様。
こちらを見ようともしません。



過ぎ去る師匠の背中。




わたくしはその背中を見つめて、「Mr.平常心」の装いを静かに脱ぎ、綺麗に畳みつつ、

その首に襲いかかる「ジャガー・ハート」、その炎が燃え上がる音を聞いたんだ…………。


                                                                《つづく》


人間発電所

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