つりぼり十番勝負《ヘラブナ編③》
■「いくら日が照ってるからって、動いてませんもの。
腹もそんなに減ってないし………。ガツガツ喰えまっか!?」
そう語るのは清川村在住の「箆鮒(ヘラブナ)五郎」さん。急に投げ込まれるウドンに迷惑千万なのだそう。
「それでも若い奴はちょいちょい摘んだみたいだけどね。急に上に向かって飛んでったからさ。」
五郎さんは御歳68歳。老後をゆったりと「つりぼり」で暮していたら、この騒ぎである。
「もう、たまらんですわ。」
延長を決めると今まで以上に無口を決め込むパックン。
(以前は細い女性がお好みだったが最近「ポッチャリ」に目覚め、守備範囲の広がりをみせる「ジャス・フォー」)
「丸太」のように無反応だった浮きも「ピンク・ローター」ほどの震えはある様で、ジッとアタリを見つめています。
寒さのせいか「尿意」が私の股間をノックするのですが、用を足して居る間に釣ったなどと虚偽申請されかねません。ここは我慢の子とさらに糸を垂れ続けました。
すると先程から何度となく竿を勢いよく立てるパックン。その度にプツブツと何かを呟いています。
「どうしたの?」
「いや、何でもない……あ、何でもないです、三平さん。」
良い心掛けだぞ!パックン。君も早く僕に追い付いて………
「チェストォォー!!!」
とうとうチガってしまったのかとパックンを見るとタモを操りヘラブナを上げているではないかっ!!しかもたいして喜ぶでも無くブツブツと呟く事を止めてはいない。
「良かったねぇ~~」
と声を掛けると、
「うん。………あ、はい。」
リアクション薄っ!!!
いぢめすぎたか?いぢけたのかパックンっ!?
そういっている内に私にもアタリがあり、3匹目をゲット。
「ごめんね!差を広げちゃってさ!」
喜びから口も滑らかにパックンに呼び掛ける。
「いえいえ…………」
薄っ!!
………「あたたかさが伝わる」ポリウレタン製並に薄っ!!!
「よしっ!!」
パックンは先程までの沈黙が嘘の様に2匹目をあげました。
「三平さん、トイレ行きませんか?」
明るい表情で言うパックン。
「どうぞ。行ったら?」
「いやいや。釣った所お互い見てた方が良いでしょう?」
などと全てを見透かした様にニヤリと笑うパックン。
「連れション」を終え、また釣りを再開すると すぐさま3匹目を釣り上げる・・・パックン。
「同点かあ…………敬語要らねえよなっ!?」
急に言葉が粗暴になるパックン。
「う、うん………もちろん。」
4匹目は先に私が上げる。
「あは。ついて来いよっ!」
「はい。かしこまりました。」
素直すぎる………素直すぎるぜ……余裕なのか??
「よしっ!…良い戦いになって来たなっ!」
パックンもすかさず4匹目を釣り上げる。
均衡する戦いに言葉を発さず、全神経をウキに傾ける二人……。
残り20分。全身全霊を傾けた誇りをかけた戦い………。
「それっ!!」
「よぉぉし!!」
立て続けに釣り上げていきました……………パックンが。
焦る私。
もうなりふり構っては居られません。残りのウドンにスイミーをまぶし、仕掛けの近くに投げ込みました。
「おいおい…荒っぽい事してるじゃんか!…えっと俺の名前何だっけ?」
「さ、三平……」
「あ"あっ???」
「三平さん…『釣りキチ三平』さんっす!!!」
さらに釣り上げるパックン………いや、『三平さん』。
「オマエさあ………」
「はい?なんでしょうか、三平さん。」
「『五平』ね…「釣り五平」!!!」
「えぇ!?…キチは…」
「そんなもんねぇよ!「釣り」もキツいだろ!『つ・五平』ね!」
さらにもう一匹を釣り上げる『釣りキチ三平』さん・・・。
3匹の差を開けられ何も言い返せませんでした。
もう溢れる涙でウキは見えず、時間はあっという間に過ぎて行きました。
泣きながら仕掛けを片付けて(言わずもがな二人分
)おじさんの元へ向かいました。
「はいどうも。で、いくつ釣った?」
おじさんが問い掛けます。
パック…「三平さん」が言いました。
「俺は7つ。そこのショボい人は4つ。」
もう顔を上げる事が出来ませんでした。
「えぇっ!?7つ??この時期に7つは………凄いなあ!脱帽だわっ!」
「ヘラ釣りは「タナを釣れ」ってね。ちょいちょいウキ下調節してさ・・・」
だ、黙ってやがった・・・・ブツブツ言ってたのはそれか・・・・
そういっても後の祭り・・。決着は歴然とついています・・・。
「三平」さんはこちらを見下すようにして上から言いました。
「俺、昔ヘラの大会出てたからっ!!」
力強く。そして大きな声で・・・・。
パックンの被っているニットキャップも涙のせいか「麦わら帽子」に見えてきてはいましたがつりぼりでべたホメするおじさんと別れ、車へと向かう道すがら言いました。
「さ、三平さん、ら、来月またつりぼりで勝負していただけますか?」
三平さんは言いました。
「いいよ・・・つうかオマエの名前なんだっけ???」
私は屈辱に両拳を握って震えながら言いました。
「五平です・・・・『つ・五平です』・・・・」
と、来月のリヴェンジを強く心に誓いながら・・・・・・・・。
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《つりぼり十番勝負・ヘラブナ編・終》
(大変長々とお付き合いいただいた方・・・・・いるんでしょうか?(:-д-))