つりぼり十番勝負《ヘラブナ編②》
妖しいぬめり気を帯び、妖艶かつ卑猥に蠢く口。
舌先でつつき、時には舐めあげる。
「はっ………はふぅっ……」
声をあげてしまいそうになる私の反応を小悪魔の微笑みで楽しみ、また細かく舐めては軽く噛む行為をいやらしく続ける。
決して「ディープ・スロート」に移行せず、隆起しかかる「竿」の反応をもてあそぶかのごとき…………「フェラブナ」
…………もとい「ヘラブナ」。
ピクピクとウキを反応させつつもなかなかウドンを飲むまでにはいかないのです。
しかしそうこうしている内に私の「ヴィン
カン竿」を激しい震えが襲いかかりました。
「は、………はうぅっ!」
天に向け隆起させた「竿」の先端から延びる透明の糸の先に艶めかしく光るその身体をさらけ出す一匹の「フェラブナ」(しつこい)。
歓喜に湧く私の横で全く反応を見せない「ダッチワイフ」ばりのウキを浮かべるパックン
(「アラフォー」と言うより「フォー」。好きな女性のタイプは「『世界ふしぎ発見』のレポーター『ミステリーハンター』になれそうな女の人」)
は惚けて座っています。
「あらら。先にやられちまったか!……隣りのお兄さんのウキ下の長さに合わせてみたら?」
つりぼりのおじさんが救いの言葉をパックンに投げ掛けたのです。すかさず私もパックンに言いました。
「『見せてください』は?」
屈辱に全身を震わせながらもパックンは言いました。
「み、見せて……くだ…さい。」
「え!?何て??」
「見せて…ください…お願いします………」
私は震えて座るパックンに上から、釣り上げた「ヘラブナ」をリリースしながら言いました。
「別に良いよ………よく見て盗むんだよ!」
ズタズタになったプライドを隠す為か、紅潮した顔で歯を食いしばりながら、私の仕掛けに合わせるパックン。それでももはや「ダッチワイフ」を通り越し「タダの丸太」のように全く反応を見せないパックンのウキを尻目に私の「カヴィン」な竿はやんごとなき震えを見せて、2匹目の「ヘラブナ」を導き上げるのでした。
「あは。また釣れちゃったよぉ。」
こちらを見ようともしないパックン。
「悪いねぇ。『釣りキチ』の実力見せちゃって……ええっと…
……俺の名前なんだっけ?」
屈辱に涙ぐみつつパックンは言いました。
「…………さ、『三平』です。」
「おいおいっ!呼び捨てかよっ!「さん」付けてくれろ。」
「さ、三平さんです……。」
「え!?何?…何三平?」
「つ…『釣りキチ三平』さんです。」
私は溜飲を下げ、鼻高々にパックンを見下ろしていると
「三平さん………もう1時間延長しませんか?」
と予定では1時間でやめるつもりだった釣りも今はもう50分をすぎて残り10分をきっています。「ボウズ」のままでは「ヘラブナ大会に出ていた」己の人生を否定する結果になりかねません。心の広い、器が琵琶湖程ある私は言ってあげました。
「人にものを頼む態度ってもんがあるでしょうよ。」
と…………。
震える身体を押さえ付け、低頭し懇願するパックン。
「分かってくれればいいよ。」と延長を決めました。
それが更なる
「血で血を洗う、阿鼻叫喚の地獄絵図の戦い」
になるとも知らずに…………。
…………………………………………つづく。
(誰もついてこないんじゃないかと言う一抹の不安を抱えつつ………)
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