Walter Van Beirendonck 2016-17 AW !!! | ダイコ★ブログ

Walter Van Beirendonck 2016-17 AW !!!

 

 

 はい。2016-17 AW PARIS MEN'S COLLECTIONのリポート二回目は、Walter Van Beirendonck(ウォルター ヴァン ベイレンドンク)と参りましょう。

 

 ベルギー王立芸術アカデミーのファッション科の講師を長年務める彼、ラフ・シモンズやベルハルト・ウィルヘルム等を育てた教育に携わる部分でも、私が心から尊敬するクリエイターでございます。

 

 

 こちらはショーが終った後、会場から飛び出して来たモデル君をキャッチした画像でございます。。。。今やPARIS MEN'Sでこんなエキセントリックなメイクをするのも、彼くらいかもしれませんねぇ。。。

 

 

 かつてファッションは天才と呼ばれるスーパークリエイター達が牽引し、新しい形や価値観をランウェイの上で披露する、フロンティアスピリットに溢れていました。今は消費者の意見を上手に反映出来て、世界中で売れる物を安価で作れる人が好まれる時代です。

 

 やはりファッションマーケットは巨大になり過ぎたのでしょうかぁ。。。。そんなに世界中の人々が、同じデザインの高価なバッグが欲しいのでしょうか。。。。

 

 

 私は彼のように自分がコントロール出来るキャパで、好きな物をきちんと作っているスタンスに心から憧れますねぇ。。。。おかげで彼の作品は日本のショップに並ぶ事は実に少なく、簡単に袖を通す事も出来ませんけどね。。。。。wwww

 

 

 

 今回のコレクションが発表されたのは今年の1月後半、、、、もう、随分と前の話になって忘れている人も多いかもしれませんが、PARISでは2015年11月13日の金曜日の、あの凄惨な同時多発テロ後の初のコレクションとなりました。

 

 

 デザイナーはコレクションのクリエイションを半年以上前からスタートします。作品が発表される2ヶ月程度前に起こった事件の為に、コレクションはを全て変更するという事は事実上不可能。しかし、ルックを追加したりショーの演出やテーマを変更するのは可能な事。。。。。これまでも沢山の政治的メッセージをコレクションに投影して来たウォルターは、自分の新作の発表の場でもあるモードの首都パリで、一夜にして130人以上の人々の命が、数人のテロリスト達によって奪われた未だかつてない最悪の長い長い夜にフォーカスしているようです。

 

 テーマは『WOEST』。。。。。ショーの後で彼自身が『私達、フランドルの言葉』と語るその言葉はオランダ語で『怒り』『激しい』『荒んだ』等の意味を持ちます。またWOEは英語で『悲痛』『苦難』『悲しみ』等。。。。。いずれにしても最悪の言葉です。

 

 『私は平和主義者です。でも、本当に誰かの顔を殴りたいくらいです。』怒りの理由についての回答はありませんでしたが、一目瞭然、それは全てのパリジャンやパリジェンヌ、PARISを舞台に作品を発表しているクリエイター、この街を愛する世界中の全て人々と同じ思い。。。。その、強い怒りの感情がぶつけられたコレクションとなりました。

 

 

 作品は安定のウォルター節がベースとなり、コントラストの強さやグラフィカルなディテールが冴え渡ります。スクエア且つオーバーシルエットのアウターにクロップドのストレートシルエットのプロポーションが基本となり、重めのウールを使ったデコラティブなトップスと、プリントやアニマルモチーフを取り入れた軽めのボトムスが今季のお気に入りのスタイルのようです。

 

 ダークなカラーと力強いヴィッヴィットカラーを織り交ぜ、デコラティブな装飾もあえてベースのカラーと合わせ、1アイテムに1カラーとファブリック、時には上下で同じ素材を使用し、視覚的にその個性的な造形のパワフルを感じさせます。

 

 まず、ファーストルックに登場するのがこちらのルックでございます。ゆったりとした緩やかなAラインのジャケットには、さらにゆったりとしたスリーブがプラスされ、フロントのヘムは丸みを帯びています。

 

 ショルダーに施されたのはストールのようなデコレーション。。。。。ロボットのようなグラフィカルなフォルムのこのパーツは、部分的にボタンホールが付けられジャケットと一体化しています。

 

 パンツはグラフィカルなモチーフのファブリックを使用していて、ヘムの部分にレオパードやエスニックなプリントの生地を切り替えてユニークでしたね。。。。

 

 これが、ウォルター流の『怒り』の表現であるのならば、首から垂れ下がるロボットのようなデコレーションは、テロで命を失いダンスホールの床に伏した犠牲者のように思えてならなかったのは、私だけでは無かったと思います。。。。

 

 

 こちらはその人形のデコレーションをコートに施したヴァージョンです。ボディの右側にかなりのボリュームで施された装飾は、ボンテージをイメージさせる綿入りの太いロープや、ギザギザにカットされたベルトでボディーに固定されています。

 

 私の想像ですと、多分この装飾は取り外し可能のように思えますねぇ。。。まぁ、年がら年中お人形をぶら下げて出歩ける訳もないですし。。。。wwww

 

 インナーにはコートと同じ真っ赤なニットをコーディネイトしてカラーを揃え、膝下から覗く少しの部分に、エスニックなブークレやレオパードのモチーフを複雑にパッチワークしたパンツのヘムやプリントのソックス、異素材使いのレースアップシューズを合わせて、ポイントも持って来ている辺りは、やはりバツグンのセンスの良さです。

 

 

 ある種、舞台衣装のような不思議なフォルムの作品も毎回いくつか登場し、ウォルターのピュアなクリエイター魂をダイレクトに感じさせてくれて、実に嬉しく思います。

 

 今季も、、、、、、。これ、なんと言ったら良いのでしょうかぁ。。。アイテムは一体何なんでしょうかぁ。。。。。。恐らく、前後のルックから予測して、もの凄いデコレーションの施されたノースリーブのトップスとパンツ。。。。もしくは、凄いデコラティブなストール。。。。恐らく前者。。。。。

 

 レオパードのパターンは今季沢山登場していて、デコレーションや様々な素材で用いられていて、こちらは紙のような張りと光沢のあるテクニカルファブリックでしたねぇ。

 

 毎回、ユニークなイラストが描かれたウォルターのコレクションの招待状ですが、今季は大きく描かれた『WOEST』の文字と、様々なモチーフがぎゅうぎゅう詰めで、混沌とした世界が描かれていました。自身のキャラクターはもちろんの事、チェーンソーや首をうなだれ失望した人、チェスの盤の上を走る人等どれも実に意味深。。。。

 

 そして真ん中に大きく描かれているのは、尻尾を切断され涙を流す豹の姿。。。。。ウォルターは何かしらの思いを込めたのかもしれませんが、本当の答えは見る人は感じたものそのものなのでしょうねぇぇ。。。。

 

 

 

 人形のデコレーションを飾ったトップスのルックが続いた前半に対して、コレクション中盤からはウォルターらしい凝った手仕事の独創的な作品が並びます。

 

 こちらはジップブルゾンのフロントにデフォルメしたレオパードの顔のようなモチーフがカットワークで施されています。このモチーフはトロンプルユになっていて、背中合わせのキャラクターが何か棒のようなものに噛み付いているようにも見えます。耳や足のディテールまで立体的に施されていて、実にユニークでしたねぇ。。。

 

 恐らく全てレザー。。。。販売されると、結構なお値段になると思います。。。。

 

 

 

 こちらのダッフルコートも実にユニークでしたね。左右の身頃のプリントはタキシードを来た紳士達がテーブルに集い、それぞれブードゥー教やアフリカのプリミティブなマスクなような物を着けているという、これまた摩訶不思議なモチーフです。

 

 ブードゥー教とは西アフリカやベナン、カリブ海の島国やハイチ、アメリカのニューオリンズ等で信仰されている民間信仰です。ブードゥーとは英語の呼び名で、現地のフォン語ではVodun(ヴォドン)と呼ばれ『精霊』を意味します。

 

 この信仰は奴隷貿易時代にカリブ海沿岸に連れて行かれた、西アフリカのフォン族の民間信仰とキリスト教が融合して生まれたもので、マリアやキリスト教の聖人等が登場します。ですがこれにはキリスト教を隠れ蓑に、自分達の土着の信仰を守ったというフォン族の悲しい歴史があり、その後の彼ら奴隷達の歴史と同じく様々に形体を変化させて行きます。

 

 打楽器のリズムに合わせ、トランス状態で精霊とコンタクトを取る姿を見たアメリカのアングロサクソン系の人々は、キリスト教の異端化を酷く嫌い、その呪術的な要素をゾンビ等と結びつけ、面白おかしくイメージダウンを計りましたが、1985年になってハイチが民主制を取り入れるようになって初めて合法化されます。

 

 儀式にハーブを使用したり、プリミティブな彫刻や仮面を取り入れる実に個性的な信仰で、ウォルターのコレクションには度々その影響が感じられます。

 

 いつか、時間のあるときに私もきちんと勉強してみたいですねぇ。。。

 

 

 強いストロークを感じさせるグラフィカルなパターンは、お得意のニットでも登場していましたね。

 

 トップスはフワフワしたモヘアのニットでパターンを編み出し、ボトムスはこちらもお得意のスパンデックスのレギンスにプリントしています。マットなトップスと少し光沢のあるボトムのコントラストも楽しく、実にポップな印象でしたねぇ。。。。

 

 レギンス男子の私としても、是非トライしてみたいルックでした!!!!

 

 

 デニムを用いたルックもいくつか登場していましたが、手仕事による細かいパーツと融合されて、只のデニムウエアではない素晴らしい仕上がりになっていましたねぇ。。。

 

 沢山のアイレットと刺繍で描かれているのは中央にレオパードのモチーフと、戦闘機やチェーンソー、両手を広げる人間と思えるモチーフや『WOEST』の文字。。。。もしかしたら、テロ後に改めて製作されたかのように、実に直接的なモチーフが鏤められていました。

 

 かなりバイオレンスなモチーフですが、ファッションとしてスタイリッシュにまとめている所は流石でしたね。。。。 

 

 

 2015-16 AW COLLECTIONで発表された、PVCのボディに『STOP THE TERRORISING OUR WORLD』と刺繍されたトップスの画像は、悲しいかな、これまで幾度と繰り返されて来た残酷なテロリズムの度にシンボルとしてSNS上に数多くUPされました。

 

 今回、まるでそのアンサーソングのように、同じ言葉を綴ったトップスが登場しました。今回はノースリーブではなくスウェットシャツで、前身頃をくり抜いたようにPVCがはめられ、両手がチェーンソーのキャラクターと『WOEST』、『STOP THE TERRORISING OUR WORLD・WALTER』という文字を刺繍で表現したアップリケが施されていましたね。

 

 こちらのトップスにも用いられているように今回のコレクションでは、このくり抜いたディテールが数多く登場していましたね。スナップやボタンまで施されていて、なんだか外れそうな雰囲気のアイテムまで登場していて、さらに深読みしてしまいます。。。。

 

 

 今季のコレクションを通して全体的に感じたのはインパクトの強いアウターが多かった事。。。。。秋冬の装いのメインとなるアイテムですが、このブランドではコンサバティブなムードは一切感じられません。価格帯も大きくなってしまうコートは買う側も売る側も慎重になるのが当然で、間違った物を選ぶと一冬後悔してしまうものですよね?

 

 でも、このブランドを愛するファン達は人と同じものは大嫌いな人達でしょうし、そんなファンに向けてより個性的な作品をクリエイトするウォルターとの関係は、長年の信頼関係によって固く結ばれています。ファン達は新しく発表される奇抜な作品から今のウォルターの心境を感じ、それを自分のライフスタイルに落とし込む。。。。デザイナーと顧客の理想の関係のように思えてなりません。

 

 先ほどニットでも登場したカラフルなジオメトリックなモチーフは、少しアレンジを加え、モヘアのコートでも登場していました。この縫いぐるみ的なモフモフしたテイストは、W&LTとしてデビューして以来彼の得意なスタイルの一つでもあります。

 

 インドネシアのバティックプリント等の民族衣装にも見られる、図案化した人間モチーフがボーダーの中に描かれていて、股間の間にはちゃんと3本目の足も描かれていてユーモアに溢れています。レッドやタバコ、モノトーンのカラーリングも実にダイナミックでウオルターらしいアイテムでございましたね。。。。

 

 

 今回のコレクションでもう一つ印象的だったのは、顔や頭を覆うゴールドのチェーンのヘッドアクセサリーです。なにやら人工衛星の破片を思わせる突起が付いたものや、フェイスピアスのようにも見えるユニークなデザインでございまして、こんな個性的なアイテムを発明出来るのは、ウォルターの他にそうそう見つかりません。。。。

 

 着けるとどんな感じなんですかねぇ。。。。ビール飲むのとか大変そう。。。なんて邪念が少し頭をよぎりました!!!!!

 

 

 

 

 

 かつて80年代には多くのデザイナー達が、発表するコレクションの中に政治や社会へのメッセージを込めていました。現在ではロンドンの女王ことヴィヴィアン・ウエストウッドとこのウォルター ヴァン ベイレンドンクくらい。。。。コレクションに社会的メッセージを込めるクリエイターが少なくなってしまったのは、個人的には少し残念でもあります。。。。

 

 デザイナーはもの凄い影響力を持っています。最新のコレクションで何を発表したかが、最近では光陰矢の如くインターネットで伝わってしまいます。また社会全体ででそのインターネットの影響からか、軽く語った一言を針のむしろのようにつつき、心ない中傷が飛び交い社会的地位さえ危ぶまれる時代です。

 

 本当の事さえ、心に思っている真実さえ語るのに警戒しなければならないこんな時代に、彼のように堂々と自分の考えを主張し、作品に反映させるデザイナーを見ると、企業の言う事だけ聞いて、どうでも良いコレクションを発表しているイエスマン達がかすんでしまいますね。。。。

 

 

 ウォルター ヴァン ベイレンドンクにはこのまま、この強い主張をブツけて行って頂きたいと心から思い、出来る限り応援して行きたいと思います。

 

 

 

 そんな時代なんですけれど、今回のコレクションではDRIES VAN NOTEN(ドリス ヴァン ノッテン)やAMI Alexandre Mattiussi(アミ アレクサンドル マテュッシ)等で、心を強く打つ素晴らしい作品や演出を見る事が出来ました。やはりビジネスだけではないパリコレの素晴らしさ。。。。。私が受けた感動のリポートはおいおいこちらでUPして参りますね。。。。。

 

 

 

 2016 SS Walter Van BeirendonckのPARIS MEN'S COLLECTIONの模様はこちらからどうぞ。


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