大きい空洞のボディに小さい空洞のマウスピース部をつなぐジョイント・マウスピースで通常では得られない「音量とディープさ」に「鳴らしやすさ」が加わったD#+の実践的なMako



西部アーネム・ランドのディジュリドゥの伴奏をともなった伝統曲は、F~G#ほどのハイピッチなディジュリドゥとハイボイスという組み合わせか、C~D#ほどのローピッチなディジュリドゥとハイ・ハイボイスという組み合わせの2系統に分かれているようです。

ハイピッチの場合に合わせる声は高くてもオクターブ上までが一般的で、それ以上の曲はレア。ローピッチの場合はオクターブ上以上からスタートする曲が多数を占める。この製作者不明のMakoはD#+なので、歌の高低差を生かしたローピッチ系の曲の伴奏にぴったりはまる(Malwa Gunborgなど)。

まず目に飛び込むのは伝統的な手法でのみ採用される昨今珍しくなったジョイント・マウスピース。本体にガッチリと組み込むには高い技術が必要で、以前に中央アーネム・ランドの名工のジョイント・マウスピースの分解修理した際には、ねじのような螺旋状の切り込みを入れて食いつきをよくしてありました。

このMakoのマウスピースがどういうふうに作られているかは不明ですが、しっかりと固定されていて接合部分にはシュガーバグのミツロウが詰められています。

ジョイントして小さくしてあるとはいえ、それでも内径「3.7-4.1cm」もあるマウスピースはバランダ(ノン・アボリジナル)のディジュリドゥ奏者にとっては巨大に感じるでしょう。

しかしローピッチで大きな空洞の本体に極端に小さいマウスピースをジョイントさせるとかなり鳴らしにくくなるのは必至で、この本体に対してジャストサイズなマウスピースをジョイントさせていると考えられます。

そして、彼らにとってこれくらいのマウスピースの方が鳴らしやすさを感じるんじゃないかと推測されます。実際、伝統奏法の基本である唇依存の演奏をせずに舌にのせる演奏をすれば、演奏者のスキルにもよりますが個人的には無理なく乗りこなすことができるタイプの楽器に感じました。

音量もしっかりとあって、出音全体がディープ。イダキ的なフルサウンドなディープさはMakoという楽器にはありませんが、洞窟の中で鳴らしているかのようなリバーヴ感があり、楽器の中に響き合ってる印象が強い。

マウスサウンドと中低音が重なってのっぺりとしたローピッチのMako特有のうねりと、高音域のホワンホワンした倍音の対比が心地よい。

ディープなサウンドとしっかりとした音量をかねそなえたジョイント・マウスピースのD#のMako。唄とセットで伝統曲の伴奏をディジュリドゥで演奏するならマストなピッチで、実践的に挑める作品です。ハードコアなバンブーマンにおすすめ!