復権狙うも酩酊中? 日本酒大手の“呉越同舟”に早くも不安の声

酒どころの灘、伊丹と伏見の老舗酒造メーカー11社が共同で
日本酒の需要拡大を図る横断組織「『日本酒がうまい!』推進委員会」を発足した
需要低迷にあえぐ業界内からは「大きな動きになってほしい」との声があがる
しかし、老舗のライバル同士の“呉越同舟”に、「足並みがそろうのか」と、早くも不安の声が上がっている

1月26日に発足した同推進委によると、参加したのは白鶴酒造、日本盛、宝酒造、辰馬本家酒造
大関、月桂冠、剣菱酒造、小西酒造、沢の鶴、菊正宗酒造、黄桜の11社
国内の日本酒メーカーが約1800社に上ることを考えれば、1%にも満たないが、侮るなかれ
生産量では11社合計で、平成21年度の国内日本酒生産量の48.5%と、ほぼ半数を占める日本酒メジャーの大連合だ

推進委結成の背景にあるのは、若者をはじめとする深刻な日本酒離れ
平成21年度の日本酒消費量は約61万キロリットルで
ピークだった昭和50年の約167万キロリットルから3分の1近くにまで減少

菊正宗酒造の小池真一・営業企画部長は「この10年、フルーティーな吟醸酒や日本酒カクテルなど
新たな楽しみ方を提案してきたが、大きな回復にはつながらなかった」と顔をしかめる
決して努力を怠ったわけではないが、右肩下がりが続く市場動向に、歯止めがかからない状況だ

推進委は、第1弾企画として飲料店向けにおいしい燗酒作りの手順を紹介するDVDを作成
今年11月には「燗酒キックオフ(仮称)」というイベントも検討している

これに対し、参加していない京都の老舗日本酒メーカー幹部は
「大手が音頭を取って盛り上げてくれるのはありがたい」と、表向きは歓迎する

しかしその一方で、ビールやウイスキー業界の盛り上がりの背景には
トップメーカー主導で、各ジャンルを牽引(けんいん)する取り組みがあったと指摘
「落ち込んだときこそ業界全体での取り組みが必要だが
日本酒業界は“船頭”が多すぎて動きが鈍くなるかもしれない」との懸念も示した

同様の声は別の飲食店関係者からもあがる
「次の(燗酒)イベントは9カ月後というが、まだ寒いんだから、今すぐやればいいのに」と、きわめてまっとうな意見

大阪市内の飲食店経営者は「日本酒メーカーは腰が重いし、営業が不十分」と指摘する
その上で「ビール会社は商品紹介から美味しい注ぎ方、ビアサーバーの点検、掃除の仕方まで説明し
おいしいビールを提供しようという思いを感じる。日本酒メーカーの営業にはほとんど会ったことがない
日本酒の知識や燗酒用の機械のメンテナンスは、ほぼ自習です」と苦笑いする
こうした日本酒業界の体質が、市場縮小につながったといっても過言ではない

「若い世代でも、日本酒愛好者は少なくない。適切な商品知識や飲み方を広め
おいしい日本酒を提供できれば、ほかの酒類とも競えるはず
営業努力や商品強化はもちろん、わかりやすい表記の統一などにも取り組んでほしい」
と訴える飲食店経営者の声を、日本酒メーカーはどう受け止めるのか

菊正宗酒造の小池部長は
「営業面で各社が競い合うため、足並みが揃いにくいという側面はある
ウイスキーにおけるハイボールのように気軽に飲める取り組みも重要だ
その下地のためにも、推進委員会では日本酒本来の良さを見つめ直し、需要回復の基礎としたい」と意気込んだ
ただ、老舗の大連合だけにスピード感は期待できそうもない。このままでは、左党ならずとも“辛口”の評価となりそうだ