愛し続けることは 嫌い続けることよりも難しいから
たとえそれが「 」であっても:00
金属と金属が擦れ合う音。
片方の金属物は固定されており、もう片方の金属がモーター音をうならせている。
まるで宝石を輝かせるような手付きでそれに触れ、愛しさを注ぎ込むように時間をかけて丁寧に仕上げていく。
そこは窓のない部屋で、天井からは電動工具のコードが蔦のように複雑に絡み合い、垂れ下がっている。
冷房機器によって人工的に冷やされた室内には油の匂いが充満していた。
ふぅ、と小さく息を吐き、右手に持っていた工具のスイッチを切ってから、作業台の上に静かに乗せる。
ほぼ完成形に近いそれを見て、ツナギは黒ずんだ頬を緩ませた。
「もうすぐだ。」
「もうすぐか。」
ふと扉の方から声を掛けられて、回転する椅子ごと体をそちらに向ける。
エプロン姿のデルタが立っていた。
「朝ご飯?こいつらいじってたら、時間もなんも分かんなくなっちゃうな。」
「もう昼だよ。昨日の夜からずっと作業してるだろ。ちょっとは休まないと体に毒だぞ。」
「だって見てよ。もうこんなに出来てる。ここまで来たら、早く会いたいじゃん。」
夢中になると周りが見えなくなる。
そんなツナギの性格は、二人が出会った頃から変わらない。
何を言ってもやめないのだから、やめられないのだから、あまり口を出さないことしている。
「ダイヤがずっと入口辺りうろうろしながら音楽聞いてた。」
ダイヤは4年前から一緒に住んでいるUTAUのことで、ヘッドフォンをして外界から自らを遮断するのは心を落ち着かせたいときと、気になっていることがある時の癖だった。
「まじでか。あいつも早く会いたいんでしょ。頑張ったら、今日中に出来るかもしんない。」
「うん、そうだな。…そういえば、結局名前は決まったのか?」
機械油の匂いがついた灰色の髪の毛をくしゃっとなでながら、"二人"を見てデルタは聞いた。
それに対してツナギは、ただ大きくひとつ頷いて、出会うまでのお楽しみ、と意地悪に笑った。
「とりあえず、お腹すいたー。」
ツナギの意地悪そうな笑顔はいつものことで、それを崩すことなくデルタの背中を押して部屋を出る。
すぐに朝食の匂いが届き、次いで、腹部がぐぅと空腹を訴えた。
静かになった室内に、見てとれる生命体はない。
だがそれらは。
誰が何と言おうと"二人"だった。
【たとえそれが「 」であっても:00/fin】