本文中にでてくる、「ユンパナ」が、
当店で扱っているジュンパナ茶園だと思われます。


ジュンパナは、「Jungpana」とつづりますから、
発音によっては、「ユンパナ」となるのだと思います。

ダージリンには、他にそれらしい名前の茶園が
ないと思いましたので、「ユンパナ」=「ジュンパナ」と考えました。
もし、違っていたら、教えてください。


「パリからの紅茶の話」
戸塚 真弓 著 中央公論新社からの抜粋です。

「・朝一番に飲むダージリン」より。


「一杯の紅茶をすすることから私の一日は始まる。
茶葉はダージリン。二十年来の習慣である。

舌が少しも荒れていない朝一番にお茶を飲むのは気持ちがよい。
 一杯目は純粋にお茶の香りと味を吟味するつもりで飲む。
何も食べない。上手にはいった時は、さらりとしたのどごしで、
清々しい香りがプーンと鼻先に漂う。
二杯目はゆっくりと風味を味わいながら飲む。」


「朝のお茶がおいしいと心から嬉しい。
なんといっても気持ちがよい。少しでもおいしい紅茶を飲むために、

ふだんから心に留めていることが幾つかあるが、

ややこしいことはひとつもない。
 まず、第一に、茶葉は名のとおったダージリンの茶園の量り売り、

専門の茶店で買う。正直なところ少し高いけれど、

小さなぜいたくであり、他にあまりぜいたくをしていないので

家計にひびくようなことはない。
それに、少し高いくらいのほうが丁寧に淹れて、丁寧に味わうという
くせがつくメリットがある。」


「ある時、茶缶の底が見え、

大急ぎでスーパーマーケットに駆けつけたが
見つけることができず、大事に飲んでいたとっておきの
ダージリンのユンパナを朝に淹れた。

初めて出合った単一の茶園の茶葉で、
高雅な香りを持つ。この時感じた清涼感のあるおいしさは、
午後のティータイムに飲むおいしさとはまったく異なり、
同じ茶葉なのにと、私は目を見張った。
これが朝に上等のダージリンを飲むようになったきっかけである。」


「私は香水をぜんぜんつけないけれど、
香り美人にとても弱く、いい匂いの人とすれちがうと、
つい振り返ってしまうし、ワインがブルゴーニュびいきで、
紅茶はダージリンが好きなのはそのせいである。
ブルゴーニュのワインもダージリンも上等なものは、
馥郁(ふくいく)とした香りがあり、それは華やかに広がり、
気品のある風味が口の中に長く残り、

のどごしがさらりとした印象だ。
それぞれが個性的な感覚の風味を発揮するところもそっくりだ。
ひとつ例にあげれば、

ユンパナの木の香りとすっきりした繊細の風味の
イメージは、ブルゴーニュの辛口の白ワインの

コルトンシャルルマーニュに似ている。」


「ユンパナの他、キャスルトン、マカイバリ、マーガレッツ・ホープ、
リシーハット、マハラニヒルズ、

それからロンドンのフォートナム・アンド・メイソンの
ファーストフラッシュが好きだ。」


「それから私の好きなダージリンは、年によって風味が違う。
この点もワインと同じだ。でも、ブレンド・ティは、

そのお茶を作った会社の独自の風味と個性を持つが、

味は毎年同じで一定している。で、産年より、
その会社の味がものをいう。リプトン、ブルックボンド、

トワインング、etc  それぞれに風味が違う。」


「ダージリンは紅茶のシャンパーニュによくたとえられるが。
それは清涼感のある風味と口あたりがさわやかだという

共通点があるからだと、私は思う。」


「この頃、旅行をする時はダージリンの茶葉と茶こしを持参する。
そして、ベッドに就く直前、部屋にあるコップに

ダージリンの茶葉をひとつまみ入れ、

ミネラルウォーターのエビアン

(外国ではその地のミネラルウォーター)を注いでおく。
翌朝、目が覚めた時には、茶葉は底に沈み、

水色(すいしょく)もほどよく、お茶の旨味もちゃんと出で、

冷のおいしい紅茶になっている。
これをイギリス流に朝食の前の

アーリー・モーニング・ティとして飲む。
旅先のホテルの朝食や街のカフェなどで

おいしい紅茶が飲めるなんてことはめったになく、

この冷のアーリー・モーニング・ティが、
旅の間、私を慰めてくれる。

私が紅茶に関して実行しているオリジナルなことと
いったら、たぶん、

この冷のダージリンのアーリー・モーニング・ティぐらいだろう。」


以上の抜粋は、ブログの構成上、塚本が勝手に改行しております。
あらかじめご了承ください。


参考文献
「パリからの紅茶の話」
戸塚 真弓 著 中央公論新社
2008年2月25日初版発行

~目次~
・細密画の肖像のイギリス王
・ポルトガルではお茶のことをシャアという
・チャールズ二世と紅茶
・ポルトガルから嫁いだキャサリン王妃と茶
・南蛮屏風と茶
・フランス人と紅茶
・紅茶は気取った飲み物だった
・プルーストの紅茶とマドレーヌ菓子
・マドレーヌか焼きパンか!
・アブダビの紅茶
・十七世紀の染め付けと茶のブーム
・ティーポットが語る十八世紀の優雅
・ワイマールで飲んだダージリンの一番摘み
・お茶とワイン
・ヨーロッパに紅茶を広めた国、オランダ
・マルコ・ポーロと茶と磁器
・烏龍茶の石乳香
・朝一番に飲むダージリン
・あとがき


帯のキャッチコピー
「コーヒー好きのフランス人は
どうしてお茶にはよそよそしいのだろう」


パリに暮らして三十年
フランス料理とワインを愛飲する
著者ならではの好奇心で積み重ねた
歴史と文化の街にあってこその
心躍る紅茶体験


同著者の既刊本(中央文庫)
「パリからのおいしい話」
「ロマネ・コンティの里から」
「暮らしのアート」
「私のパリ、ふだん着のパリ」

「パリからの 紅茶の話」