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森信親長官の金融庁は金融機関をどうしたいのか?
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西日本のとある地銀の不動産ローンですが、こんなのがあります。
○海外不動産担保ローン
融資金額: 100万円以上5億円以内(円建て)
契約期間: 1年以上20年以内
借入金利: 年2.80%(保証料含む)
「海外不動産」というと漠然としてますが、東南アジア方面への提携ローンが多いようです。
金額から見てわかるように、まあ、個人向けローンですね。それも資産家というより、普通の個人に毛が生えたような、なんちゃって富裕層向けですよね。
ちなみに、某メガバンクの一般個人向け住宅ローン(11月現在)の実勢金利は、固定型20年で2.7%ぐらいです。
うーん、頭がくらくらして来るような、出血大サービスの金利ですね。目をつぶれば、こんな展開が容易に浮かんでくる感じです。
①インチキ営業マンが、なんだか物事をよくわかっていない田舎の年寄りに、「東南アジアとかの不動産投資、ぜったいおすすめですよ。今なら、日本で家建てるのと同じぐらいの金利でローンが組めますよ」とセールスする
②年寄りは、東南アジアのわけわからない物件をつかまされて大損。あるいはその国の不動産市況と為替の変動でやっぱり大損する
③銀行側は年寄りに、「せっかく買った東南アジアの不動産、ここで損切しちゃうのはもったいないです。中長期的には確実に値上がりしますから」と、預金やら投信やそのほか残った資産を処分させてローンの返済を続けさせる
④やがて丸裸になったお年寄りは自己破産。
⑤銀行側は、担保として取り上げたインチキ海外不動産を処分して債権を回収しようとするが、市況と為替の変動でさらに損失額は増えており、地銀も結局大損におわる
⑥経営破たんに追い込まれる地銀が続出し、金融庁長官が国会に呼ばれ、厳しく追及される。
という、みごとなスキームです。
逆に言えば、ここまであからさまにアレな融資をしないとやっていけないほど、地銀は追い込まれているわけです。
経済専門誌は、金融庁が10月、地方銀行協会との意見交換会で、「持続可能性に深刻な問題を抱えている(=遠からず赤字転落して潰れそうな)地銀に検査を行う」と通告したと報道していましたが、意見交換会で金融庁が言った内容を、もうちょっと詳しくみてみましょう。
かみ砕いていうと、こんな内容です。
○金融庁はこれまで、地方の人口減少や低金利が地銀の経営にどんな影響を与えるか試算し、地銀に「このままだとやばいよ」と問題提起を続けてきた。
○警告した通り、2017年3月期の決算では地銀の半分が、本業で赤字になった。
○ついでにいうと、5年後には地銀の7割が本業が赤字になると試算している。
○ほんとにそろそろ抜本的な経営改革に取り組まないと、手遅れになる。
○金融庁はこれまでさんざん、「このままだとまずいから、リストラでも新規事業でも何でもいいから、今後のビジネスモデルを考えろ」と繰り返し警告してきたが、お前ら地銀は、自分の将来のことをまじめに考えるどころか、経済誌や日経に「ビジネスモデルは経営の判断事項であり、そこまで当局が口出しするのか」というような批判記事を書かせて、挙句にやることは地方の高齢者から金をむしり取ることばっかりだ。しかし、そろそろほんとにおまえらオワコン地銀の将来はやばい感じになってきたので、「当局として、経営判断だからといって任せておくことはできない」。
○そこで今事務年度は、先行きが特に危険な地銀を検査し、今後の身の振り方について、経営陣と「深度ある話し合いを行っていきたいと考えている」。
ということです。
もっとはっきり言うと、金融庁としては、「昔ながらの銀行業はオワコンで、世の中からは昔ほど必要とされていないので、リストラしたり合併したりして規模を大幅に縮小するしかないんじゃないの」と思いつつも、さすがにその通り本音をいっちゃうと角が立つので、「ビジネスモデルを考えろ」といっているわけです。
メガバンクはさすがにその辺は自覚していて、投資銀行だとかフィンテックだとか新規事業に乗り出しつつ、旧来部門は1万人単位の大規模リストラを打ち出したわけです。
これに対して地銀は「どうしたらいいのかわかんねーよ。だったら、金融庁が考えろ、このボケ」と逆切れをかましているのが現状です。
そこで金融庁が打った手が、昨年9月に公表した、「金融仲介機能のベンチマーク」と銘打った、地銀の実力番付の作成です。
これは各地銀の取り組みをいろんな切り口で取り上げて紹介するというものなのですが、地銀があんまりにもあんまりなので、金融庁は10月会合で、このように恫喝しました。
○(昨年9月のベンチマーク発表時は)各指標の定義を明確化しなかったため、銀行ごとに比較可能になっていない。イケてる銀行とダメダメ銀行の差を「見える化」し、個人や中小企業が、たよりになる銀行がどこなのか、わかるようにするとの目的は、いまだ達成されていない。
○というわけで、いくつかの指標を選定し、公表したい
つまり、あんまりガタガタいってると、週刊誌の人気企画「病院ランキング」「進学校ランキング」の地銀バージョンを金融庁が作って、どこの銀行と取引すると得なのか損なのか、客にばらしちゃうぞ、というわけです。
とまあ、それはさておき、ここで一つ疑問がわいてきませんか。
地銀など旧来型の銀行業がオワコンで、世の中から(昔ほど)必要とされていないとすれば、そんなオワコン業界を管轄する金融庁の存在価値もどうなのよ、っていう疑問です。
それは上層部の問題意識となっていて、だからこそ最近はやたらと積極的にフィンテックや証券がらみ(個人投資家の資産運用とか投資信託とか)といった、新たな分野(業者)の開拓に力を入れているわけです。
そしてまた、これまで銀行業界を支配する力の源泉であった検査局はリストラして、もっと先行きと未来のある業界を取り込むためのプロジェクトに人手を貼り付けよう、そんな狙いもあるわけです(たぶん)。

