残業法案がもめています。厚労省の担当局長が4月を待たずに依願退職とかしてそうで怖いですね。

 

さて、高度なプロフェッショナルの人に裁量労働制を導入して、うまくいくのでしょうか?

 

反対派の主張は「残業青天井」法案だ、というものです。

 

推進派の主張は

 

①効率よく働ける人は、さっさと家に帰れる。在宅勤務など自由な働き方が可能になる。

 

②24時間バリバリ働いてガンガン稼ぎたい人だっている

 

③無茶な仕事量を要求すれば、優秀な社員はやめてしまうので、会社も自制する

 

推進派が言っているようにうまくいくのか。英米ではどんな感じなのでしょうか。

 

①ですが、ちょっと言いすぎです。英米で裁量労働制(年棒制)で働いている人たちだって、基本的にオフィスアワーは会社にいますよ。

 

①みたいなことを言う人は、アート的でクリエイター的なカジュアルウェアな仕事を考えているんだと思いますが、そういう人は本当にごく一部です。

 

在宅勤務だってセキュリティの問題があるので、何でもかんでも可能ではありません。

 

裁量労働制の対象になる「企画立案関係」の人は、当然ながら企業戦略にタッチする人です。

 

会社の重要資料を家にご自由にお持ち帰りください(そして、それを手土産にライバル社に転職してください)って、そんな会社、海外にはありません。

 

②もなんだかなあ、という感じです。

 

だって、日本の会社員の「バリバリ働いてガンガン稼ぐ」っていうのは、「一生懸命働けば、生涯給与1億円アップだって夢じゃない!」というレベル感じゃないですか。

 

英米で24時間バリバリ働く人たちって、「年収1億円だって夢じゃない」という世界です。桁が違います。

 

③ですが、問題は「優秀な社員」じゃなくて、大多数を占める「そこそこ」とか「それなり」の社員がどうなるか、って問題ですよね。

 

これは日米の経営文化、企業風土の差が問題になるんじゃないでしょうか。

 

少し言い過ぎかもしれませんが、裁量労働制の対象になるような職場に限れば、英米の企業の上司には、気に入らない部下を首にして気に入った人間を雇い、給料をいくら払うか決める権限があります。

 

ただその結果、自分の担当部門の成績が下がれば、今度は上司が首を切られる番です。

 

わかりやすく例えれば、プロ野球の監督です。

 

選手に無茶を言うのは結構ですが、それでチームが崩壊すると、自分自身がお払い箱です。

 

選手を酷使して故障。

 

監督自ら「技術指導」をした選手が、調子を崩す。

 

あわてて代わりの選手を探しますが、そんなに都合よく、明日から働いてくれる穴埋め選手が見つかるとは限りません。

 

結果として、今シーズンのペナントは絶望的に。

 

エースや主砲だけの話でなく、中継ぎや守備がうまい7番打者というような地味な選手でも、レギュラーが複数人抜けると、致命傷になりかねません。

 

そうなるとスポーツ新聞は、「次期監督人事浮上」と書き立てます。

 

「あの監督は選手をつぶす」という悪評が立つと、監督の再就職も難航するでしょう。

 

ついでに言うと、優秀な選手は無茶を言っても言わなくても、FA権を行使して給料の高いところに移ってしまいます。

 

そのため、「そこそこ」と「まあまあ」の選手をアメとムチで、「持続可能な範囲で」こき使って成績につなげる監督が、名将と呼ばれるわけです。

 

もちろん、某球団のようにスター選手を大金で集めまくるという戦略もありますが、その場合、監督のクビはさらに切られやすくなります。

 

パワハラの犠牲者をゼロにすることはできないでしょうけれど、上司の側に一定の歯止めがかかるわけです。

 

ところが、だれも文句をつけられない大御所がトップに居座って、金メダルを取れなかったのは「選手の才能と努力が足りなかった」ということになるアマスポーツなんかだと、どうでしょう。

 

どうもいろいろと陰湿なことになって、選手だけが泣きを見るっていうのが、最近ようやく明るみに出てきた感じがありますよね。

 

プロ野球でも、結果責任を問われない「親会社のオーナー」は、言いたい放題、やりたい放題です。

 

さて、日本の企業風土はどちらでしょうか。

 

しかし実のところ、米国だって昔から今みたいな企業文化だったわけではありません。

 

大昔はむしろ、生え抜きの社内官僚が巨大コングロマリットを支配し、社員は家族的一体感でもって包み込まれ、投資家の発言権なんてまるでなし、という世界でした。経営学の教科書にはそう書いてあります。

 

信じられないことに。

 

(そのうち(下)に続く)