映画『丘の上の本屋さん』(2021/イタリア)




原題は、Il diritto alla felicita 「幸せになる権利」。


プロパガンダ的なものへの抵抗感がないわけではないので、複雑な気持ちになりつつ観ました。

制作にユニセフが関わっていて、原題はメッセージがそのままストレートなのに、邦題がそれをぼやかしてしまって。

日本という市場を考えてのことなのかもしれませんが、中身も結構ストレートなので、むしろ最初から原題を知っていたら、それほどモヤモヤしなかったかも。

主人公の導くような本の与え方も、私は敢えて我が子にはしませんでした。良いとか悪いとかではなく、好きではないというだけですが。


批判めいたことばかり書いてしまいましたが、

静かな田舎町のこぢんまりとした古本屋、知識が深く思慮深い店主、隣にはカフェ、時折訪れる個性的な客たち、本への愛と人への愛、

近くにあったら通いたくなるような、そんな気持ちにさせる映画でもあるのです。



SNSで個人が自分の権利を叫ぶことができる時代です。

ダイバーシティやジェンダーレスを目指し、それに付随するように行き過ぎたリベラルの問題や社会の分断が生まれ、人々は余裕をなくし、それぞれ自分のこと、自分たちのことでいっぱいになっている。



でも、こんな時代だからこそ、自分よりまず相手の、他者の、特に十分な声を持たない弱い者、小さな者たちの権利を、思いやる努力をしなければと思います。本を通じてリベロがエシエンにしたのは、そういうことではないかと。



ガザ、ウクライナだけでなく、スーダン、シリア、イエメン、アフガニスタン、ミャンマー、ハイチ、…エシエンの祖国ブルキナファソも。

流血と混乱の中にいる子どもたちの「幸せになる権利」。

自分の権利ではなく、そういった子どもたちの権利を思いながら、世界人権宣言を読んでみてください。


世界人権宣言


こちらは子ども向けに書かれた世界人権宣言


子どもたちをより意識できるので、印象が変わります。



主義を声高に主張するタイプじゃないし、崇高だからといって盲目に賛美するつもりもないんですが、あまりにも世の中酷いと思うので。

何にもできない自分にがっかりもするので。

記しておきたいと思ったのです。



これ以上、戦火が拡がり、子どもたちが犠牲になりませんように。





2024.4.19