地球に大気と海と大地が出来た頃、神獣たちが生まれた。
連日の嵐の中で生まれた神獣たちは、すでに それぞれの役割を与えられていたと言う。

羅刹(らせつ)・・・
彼女は、美しい鬼の女王だ。
鬼の女王は、始まりの理を持って生きている。
鬼の女王は、二人存在していた。
深紅の女王と瑠璃の女王。
鬼も地球をかき回す嵐の中で生まれた始まりの神獣の一族だった。
鬼の役割は、大気を正常に保つ事。
二人の女王の初めての仕事は、嵐を静る事だった。
始まりの一族である二頭の龍、婀坐華(あざか)と婀坐志(あざし)は雲を操り太陽の恵みを地球上に与えた。
太陽の光に照らされた海は徐々に蒸発して行き、大地を拡大させた。
大地には水が湧き、いくつもの川が生まれた。
始まりの神獣 一角獣たちは清らかな水に癒しの力を与え、その水が海に流れ込んで行く。
金色に輝く始まりの神獣 狐の雷宮(らいぐう)と雪姫(ゆきひめ)は命の源である宝珠を海に沈めた。
やがて、地球の海に最初の生命が生まれる。

羅刹は狐の社でタミに、始まりの物語を語った。
「鬼の女王が二人いるのなら、瑠璃の女王は今どこに居るのですか・・・?」
「女王は、必ず半分の仲間を連れて千年の眠りにつくのが定め。
我らは二人で一人、半身が眠りから覚めれば起きていた女王の記憶を一瞬にして継承する。
そして、今まで起きていた女王は仲間と共に千年の眠りに入る事になる。
これは我らが生まれて来た時からの、始まりの理だ」
「羅刹には親がいないと言う事ですか・・・?」
「親もいなければ子もいない。
鬼族は、他の神獣とは違う生き方をしている」
羅刹が語る事柄は、タミにとって興味深いものばかりだった。
 「他の神獣と違い、我らは死ぬ事がない。
それゆえ、子を作る必要もないのだ。
何らかの事情で体が塵と化しても、千年の時があれば再生出来る」
「千年も、ですか・・・?」
「我らにとって、一瞬の歳月にすぎぬ」
羅刹はタミのビックリした顔を見て微笑んだ。
美しく均等にとれた顔立ちが微笑むと、それだけでタミの心は和んだ。
「そうそう羅刹の社は、どこが良いかしら・・・?」
「森の中で、月光さす地が良いな」
「承りました」
タミは羅刹に、にっこりと微笑んだのだった。

数日後、羅刹の指定した通りの場所に社の建設が始まった。
羅刹直属の配下が一緒に住む為の住居棟も建設も同時進行された。


つづく・・・