そこは、田んぼが広々広がっていて、人は誰もいなくて、

田んぼの真ん中に低い土手があり、小さな小川が流れている。

 

遠くの田んぼのあぜ道を、黒い犬が一匹歩いているのが小さくみえた。

飼い主の姿は・・・・・見えない。

家から逃げ出してきたのだろうか?

犬はどんどん歩いて、やがて見えなくなった。

 

私はそのまま土手が少し小高くなってる橋のところまで行って、鳥の観察をしていた。

ホオジロやセッカの声がする。

カワラヒワの群れを目で追ってふと見ると、

さっきの黒い犬が、川沿いの土手のあぜ道を歩いて、こちらへ向かってきている。

私が見ると、足を止め、目をそらすと、そろりそろりとまた歩く。

 

大きい犬だけど、おとなしそうで、尻尾もくるんと上を向いている。

「迷子になったの?おなかすいたの?お家に帰れるといいね。」

そう話しかけてみたけど、何もしてあげることができず、私は犬と反対方向に歩きだした。

 

しばらく土手を下って、ふと犬が気になって、また戻ってみた。

でも犬の姿はどこにも見えなかった。

無事に家に帰れてたらいいれけど。