22歳の私は、日記に「自信がない」「淋しがっている」と書いた。
大学の4年目に休学して一年間の海外留学から帰国したとき、同級生の多くは就職先が決まっており間もなく卒業していった。
同学年でひとり残る孤独感、就職活動の不安、満たし合う彼女がいない寂しさ。それらが脳内で混ざって渦を巻いていた。
スーツ姿で選別され、「何者かにならなければならない」重圧の中で、私はかつて自分を全肯定してくれた彼女に救いを求めた。それは、身を削るような思いで私と決別した彼女にしてみれば身勝手な話だ。だが、自己嫌悪に震えつつ彼女に甘えるしかなかった22歳の「弱さ」も理解はできる。
彼女に手紙を出すまでの一カ月間に、彼女の名前は日記に3回登場していた。
手紙を投函する1カ月前の日記。後輩のYから声がかかり、卒業したばかりの友人Cを囲んで飲んだ。そのなかに彼女もいた。真っ暗な寮の部屋で午前3時まで話すとはなかなかの展開だ。「真剣だった」発言は、この日で間違いないだろう。
手紙の17日前。便りをくれた「M」というのは、留学先の大学で一緒だった同い年の日本人女性だ。留学中、私は彼女に苦しい片思いの末、告白して振られた。私が2年半交際した相手とついに別れたのは、この片思いがきっかけだった。
手紙の9日前。春なのに、心がすさんでいる。
新たに判明したこと。彼女に手紙を出したのには、ただ再会したからではなく、Mさんからの手紙というきっかけがあった。
・3月25日に、帰国後初めて彼女ときちんと話した。「告白された時は真剣に考えた」と伝えた。
・この再会がきっかけになり、彼女と関係を修復したいと望むようになった。
・そんな中、留学先で私を振ったMさんから手紙が届き、嬉しくて「30分ぐらい読み返した」。
・私は彼女に対してはMさんと同じく「振った」立場でありながら、相手(私)を思いやれるMさんと、傷つけたまま放置している自分との態度の違いを思い知らされた。
・キャンパスから同級生が去った春、不安や孤独感が強まる一方、彼女への欲求をはっきり自覚するようになった。
・Mさんにならい、私も彼女にきちんと手紙を書き、距離を詰めたいと考えた。
では、自分の酷薄さを気付かせた「Mさんの手紙」とは、どんなものだったのだろうか。