塩冶判官(勘三郎さん)の声が耳に残ります


四段目


 略


力弥/\。


  ハア。


由良助は


  いまだ参上仕りませぬ。



 略 廊下の襖踏開き。かけ込大星由良助。主君の有様見るよりも。はつと計にどふどふす。跡に続て千崎矢間。其外の一家中ばら/\とかけ入たり。 

ヤレ由良助待兼たはやい。ハア御存生の御尊顏を拝し。身に取て何程か。ヲヽ我も満足/\。定めて子細聞たであろ。ヱヽ無念口惜いはやい。委細承知仕る。此期に及び。申上る詞もなし。只御最期の尋常を。願はしう存まする。

ヲヽいふにや及ぶと諸手をかけ。ぐつ/\と引廻し。くるしき息をほつとつき。

由良助。此九寸五分は汝へ筐(かたみ)。我欝憤を晴させよと。

先にてふえ刎切。血刀投出しうつぶせに。どうとまろび息絶れば。御台を始並いる家中。眼を閉息を詰歯を喰しばり扣ゆれば。由良助にじり寄刀取上押戴。血に染る切先を打守り/\拳を握り。無念の涙はらはら/\。判官の末期の一句五臟六腑にしみ渡り。扨こそ末世に大星が。忠臣義心の名を上し
根ざしは。斯としられける。


One vision of Queen


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十一段目


 略

先づ一番に打上るは。大星由良助義金。二番目は原郷右衛門。第三番目は大星力弥。
跡に続いて竹森喜多八片山源太。先手跡舟段々に烈を乱さず立出る。

奥山孫七次田五郎。着たる羽織の合印。


いろはにほへと
と立ならぶ。

勝田早見遠の森。音に聞へし片山源五。大鷲源吾かけやの大槌引さげ/\。
吉田岡崎


ちりぬるをわか

手は小寺立川甚兵衛。不破前原深川弥次郎。
得たる半弓手挾で。上るは川瀬忠太夫空に輝く。大星瀬平。


よたれ。そつねならむうゐの。

奥村岡野小寺が嫡子。中村矢島牧平賀


やまけふこえて。

朝霧の立並びたる蘆野や菅野。
千葉に村松村橋伝治。塩田赤根は長刀構へ。
中にも磯川十文字。遠松杉野三村の次郎。木村は用意の継梯子。千崎弥五郎堀井の弥惣。同弥九郎遊所の酒に


ゑひもせぬ。
由良助が智略にて八尺計の大竹に。弦をかけてぞ持たりける。後陣は矢間十太郎。遙跡より身を卑下し。出るは寺岡平右衛門。仮名実名袖印其数四十六人なり。
鎖袴に黒羽織忠義の胸当。出揃ふ。げに忠臣のかな手本義心の手本義平が家名。
天と河との合詞忘るな兼ての云合。矢間千崎小寺の面々。力弥を始とし表門より入/\/\。郷右衛門と某は裏門より込入て。
相図の笛を吹ならば時分はよしと乗込よ。取べき首は只一つと。由良助に下知せられ怒の眼一時に。舘を遙に睨付裏と表へ。
別れ行。

 略



 略 寝間とおぼきし所を見れば。夜着布団の温り。此寒夜にさめざるは逃て間なしと覚へたり。

表の方が気づかはしとかけ行を。 ヤレ平右衛門待々と。矢間十太郎重行。師直を宙に引立てコレ/\何れも。

柴部屋に隠れしを見付出して生捕しと。

聞より大勢花に露いき/\勇で由良助。

ヤレでかされた手柄/\。去ながらうかつに殺すな。仮にも天下の執事職。殺すにも礼儀有と。

請取て上座にすへ。

我々陪臣の身として。御舘へふん込狼藉仕るも主君の怨を報じたさ。慮外の程御赦し下され。御尋常に御首を給はるべしと相述れば。


師直も遉のえせ者わろびれもせず。ヲヽ尤々。


覚悟は兼てサア首取と。


油断さして抜打にはつしと切引はづして腕捻上。


ハアヽしほらしき御手向ひ。サアいづれも。日比の鬱憤此時と。

由良助が初太刀にて四十余人が声々に。浮木にあへる盲亀は是。三千年の優曇花の花を見たりや嬉しやと。踊上り飛上り筐の刀で首かき落し。悦びいさんで舞も有。妻を捨子に別れ老たる親を失ひしも。此首一つ見ん為よけふはいか成吉日ぞと。首を擲つ喰付つ一同にわつと嬉し泣理り過て哀なり。

由良助は懐中より亡君の位牌を出し。床の間の卓に乗奉り。師直が首血潮を清め手向申。兜に入し香をたき

さすつて。三拝九拝し。略



One vision of Queen

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高師直(富十郎さん)の憎たらしいこと
とはいえ、わたしこんな役が好きだったり。


今回はありませんでしたが九段目山科閑居は、加古川本蔵がいい仕事をして本懐を遂げ死んでしまいます

とても泣けるので機会があったらみてくださいねー


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九段目


 略



此様なめでたい悲しい。

事はない。




力弥が妻に成たるは。女御更衣に備はるより。百倍勝つてそちが身は武士の娘の手柄者。手柄な娘(本蔵の娘)が婿殿(由良助の息子)へ。お引の目録進上と懐中より取出すを。力弥取て押戴披き見ればコハいかに。目録ならぬ師直が屋敷の案内一々に。玄関長屋侍部屋。水門物置柴部屋迄絵図にくはしく書付たり。由良助はつと押戴。


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以上は戯曲本の転載なので、演出によってかわると存じますが

これからご覧になる方参考にしてください


前に通しで見たときと配役もこんな感じで違うので、いつ見ても楽しい


昼の部

大序  鶴ヶ岡社頭兜改めの場
三段目 足利館門前進物の場
    同 松の間刃傷の場    2007.02     2009.11
             高師直   富十郎     富十郎      
          桃井若狭之助 吉右衛門    梅 玉
            足利直義  信二郎     七之助
            鷺坂伴内  錦 吾      團 蔵
            顔世御前  魁 春      魁 春
            塩冶判官  菊五郎     勘三郎


四段目 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場
    同 表門城明渡しの場
            塩冶判官  菊五郎     勘三郎
          石堂右馬之丞 梅 玉     仁左衛門
            顔世御前  魁 春     魁 春
            大星力弥  梅 枝     孝太郎
            赤垣源蔵           松 江

          富森助右衛門          男女蔵
            大鷲文吾  秀 調     秀 調
          小汐田又之丞 高麗蔵
           竹森喜多八  松 江
          木村岡右衛門 男女蔵     由次郎
            倉橋伝助  猿 弥
           佐藤与茂七  宗之助    萬太郎

           矢間重太郎           宗之助
          勝田新左衛門 桂 三
           小野寺十内  門之助
            斧九太夫  芦 燕     錦 吾
           原郷右衛門  東 蔵    友右衛門
        薬師寺次郎左衛門 左團次    段四郎
          大星由良之助 幸四郎     幸四郎


浄瑠璃 道行旅路の花聟 清元連中
            早野勘平  梅 玉    菊五郎
            鷺坂伴内  翫 雀     團 蔵
            腰元お軽  時 蔵      時 蔵


夜の部

五段目 山崎街道鉄砲渡しの場
    同 二つ玉の場
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場
            早野勘平   菊五郎    菊五郎
            斧定九郎   梅 玉     梅 玉     
          一文字屋お才  時 蔵     芝 翫
           千崎弥五郎  権十郎    権十郎
             おかや    吉之丞     東 蔵
            判人源六   東 蔵     左團次
          不破数右衛門  左團次    段四郎
            女房お軽   玉三郎     時 蔵


七段目  祇園一力茶屋の場
          大星由良之助 吉右衛門   仁左衛門
            遊女お軽   玉三郎     福 助
            大星力弥   児太郎     門之助
            赤垣源蔵  友右衛門    松 江

          富森助右衛門           男女蔵
           竹森喜多八  松 江
           矢間重太郎  吉之助     宗之助

           中居おつる             歌 江
            鷺坂伴内   亀 鶴
            斧九太夫   芦 燕     錦 吾
          寺岡平右衛門  仁左衛門   幸四郎


十一段目 高家表門討入りの場
     同 奥庭泉水の場
     同 炭部屋本懐の場

     (花水橋(両国橋)引揚の場)
          大星由良之助  吉右衛門   仁左衛門
           小林平八郎   歌 昇     歌 昇
           竹森喜多八   松 江     錦之助

            赤垣源蔵             松 江
           佐藤与茂七            萬太郎
           矢間重太郎            宗之助
         磯貝十郎左衛門  種太郎
            大星力弥    児太郎    門之助
             高師直   幸右衛門
           村松三太夫   由次郎
          富森助右衛門  家 橘     男女蔵
           原郷右衛門   東 蔵     友右衛門

            服部逸郎            梅 玉




雪の日の討ち入りってドラマですね。ってだいぶ前にも書いたけど


五臟六腑にしみ渡るより、

わたしはどうも五官に残ってしまいます




One vision of Queen