それはこの日に観た桜です。


仙台某所に、いちばん大切な人と夜桜を観に行きました。

私は彼とやり直してずっと一緒に生きていきたかったけど、もうそれはできないと言われてしまいました。

眠れない夜を幾晩も過ごし、やり場の無い愛で胸をいっぱいに詰まらせながら、私は生まれて初めて一人で新幹線に乗り元夫に会いに行きました。はやては指定席を買わないといけないと知らなくて、間違った乗車券を握りながら所在無く新幹線の荷物置き場の前で立って行きました。通路の窓を滑っていく静かな朝の田園風景が美しかったです。

元夫と素敵な喫茶店でお茶をし、お昼には牛タンを食べて、また別の喫茶店でケーキを食べました。話し合いは予想通りとても辛いものだったけど、それでもいいから彼といる時間が永遠に続けばいいのにと思いました。

最後に私たちはこの日が開花だと聞いた仙台の桜を観に行きました。



お花見客がたくさんいて、的屋さんや屋台がたくさん出て、とてもにぎやかでした。こういうの何年ぶりだろうね、と言いながら、彼と屋台の焼き鳥やお団子やチョコバナナを食べて缶ビールも2本一緒に飲みました。何もかもとても美味しくて、綺麗で、楽しくて、楽しくて、私はあまりにも幸せで何だかこの時間が現実のものとは信じられない気持ちでした。




もはやこれ以上思い出の数が増えないと分かったら、人は今ある思い出がひとつでも失われないように記憶に刻みつけようと、死に物狂いの努力をするようです。

思い出をできるだけ正確に記憶にとどめておきたい。なぜなら人間は忘れる生き物だから。


帰りの新幹線の時刻が迫って、私たちは仙台駅まで20分ほど歩いて戻りました。ずっと言いたくて、最後まで言い出せなかったこと、

「手をつないでもいい?」

という一言が言えてよかった。私たちは一緒に手をつないで歩きました。私は喜びと悲しみで涙があふれて止まりませんでした。桜木町で、初めて彼と手をつないだ時のことを思い出しました。いつまでもどこまでも世々に限りなく、病める時も健やかな時もこの命が尽き果てるまで彼の手を握り締めていたかった。握り締めていたかったです。


だいじな思い出を忘れないために書いておきたいことは山ほどあるけど、今日はもうこれ以上何も書けません。