仕事を休まなければならない。全て、正直に社長に打ち明けた。

迷惑をかけてしまうので、代わりの人がいるのなら、

その人に譲ったほうがいいのかもしれないと話した。

仕事をやめざるをえないのは仕方がないと思った。
「まだ検査結果はでていないのだからどうなるかわからないでしょ。

仮に、入院して手術となっても、いない間はなんとかするから、

いつでも戻ってきなさい。」と理解ある言葉をかけてもらえた。

ほんとうに感謝だ。


数年前は、大切なものを失いたくないために目をそらしたことに、

今度は自ら飛び込んでしまった。

あまりの仕事の忙しさから逃げ出したいがために。


そして、最悪の現実が突きつけられるのだ。皮肉だ。
それでも、彼と別れていてよかったと思った。

結婚していなくて、子供もいなくてよかったと思った。

悲しむ人が一人でも少ないほうがいいと思ったのだ。
その考えが正しいかどうかは別として・・・。


そんな風にでも思っていないと、自分を支えていられなかった。

失うものは何もないと思っていないと

押し寄せてくる感情の波に飲み込まれてしまいそうだった。


あらゆる意味で、胸が痛い出来事だった。



気持ちが、手術に向かって集中していこうとしているときに限って、

携帯がなる。何年も前に別れた彼だ。

懐かしい番号が表示されていたりして。弱い心は、とってしまう。

「元気?」と聞かれて、「入院するの」といってしまいそうになる。


だけど、言葉は「元気だよ。」に変わっていた。


ほんの少しよりかかりたい、ほんの少し・・・。
こういうのを虫の知らせというのだろうか・・・。

ほんとのことなど言える訳がない。

別れた彼に今さら何をどう言えるというのだろうか・・・。