1992年、26歳。「もしかしたら、この人と結婚するのだろうか?」
なんて思い始めた頃、左胸の外側にコロコロするものがあることに気づいた。


「なんだろう・・・」

ほんとに純粋にそう思った。乳がんという言葉は耳にしたことはあっても、

自分のそれがイコールそのものであるとは爪の先ほども一致しなかった。
彼に相談し、「検診に行ってきなさい」と、

当たり前のように言われ、「そうするね」と答えていた。
だけど、どこかで恐れいていたのだろう。嘘の報告をした。
「病院で診てもらったけど、特に心配するようなものじゃないから大丈夫と言われた」
もちろん、病院になんか行かなかったのだ。
特に痛みを感じることもなく、ときどき指で触れて気にはしても、

すぐに意識の外へと追いやってしまい、何事もなかったように日々過ごしていた。


目をそらしてしまったのだ。大切なものを失いたくなかったのだ。
彼も。自分の胸も。

その5年後、それぞれの理由で彼とは別れた。