『孤独のグルメ』 シーズン9 第7話
『ありがとうございました。それでは、失礼いたします。』
ふぅ。なんとか納品間に合った。
でも、あと時計。 喜んでくれて良かった。
さて、お次はとなりの新小岩。
そういえば、確かこの辺りだったよなぁ。
あ。 あった、あったぁ。
良かったぁ。 変わらずに続いていて。
また来ます。
あぁ・・・。 じゃがとろ、食いたかったなぁ。
魚のスープもよかった。
でもあれ。 辛いんだよなぁ~。
となりの駅だから、と思ったけど・・・。
歩く距離ではなかったかぁ。
・・・あそこか。
『ふぁ~っ!』
『ふっあ~っ!』
『すみません。井之頭と申しますが。』
『あ、井之頭さんですか。武田です。申し訳ありませんが、
もう少々お待ち下さい。』 『うっ!ふぅ~!』
『あと、7回で終わりますんで。』 『はい。』
『あ、靴はそこの下駄箱にお願いします。
あとでシューズ、お貸ししますんで。』 『貸す?』
『はぁ~! すみません。お待たせして。』 『あ、いいえ。』
『決めたトレーニングメニューは妥協したくないんです。』
『はぁ・・・。 立派だと思います。』
・・・その姿勢も。 筋肉も。
『例えば、この辺りに飾るインテリアはないかと思いまして。』
『あぁ、この辺りに。』
『えぇ、他の大手ジムとの差別化を図るためにも何か
ウチならではの個性といいますか。会員さんたちに
気持ち良くトレーニングを持続して頂ける何かを飾る
のはどうかと思いまして・・・。』
『あぁ、分かりました。ちょっと考えてみますね。』
『はい。失礼します。』
『・・・・・。』 『・・・・・。』
『折角なんで、何かトライしてみますか?』
『え?いや、私なんてとても、とても。』
『あれなんてどうですか?』 『いや、走るなんてとんでもない・・・。』
『歩くだけでも充分です。それも立派な有酸素運動ですから。』
・・・・・すでに充分、歩いてきたんだけど・・・・・。
『ね!さ、どうぞ、どうぞ。』 『あっ、はぁ。』
『ジャケット、お預かり致しますね。』 『あぁ。』
『こちら?』 『そちら、上がって頂いて。』
『ね、1日20分歩けば脂肪燃焼できますんで!では。』
『じゃ、動かしますね。 では、腕を振ってみましょうか。』『はぁ。』
『はい、膝も上げてぇ、ワン・ツー。ワン・ツー。』
・・・・・まさか、また歩くことになるとは・・・・・。
背後から聞こえるカシャカシャ音/
うん?
『武田さん、それは?』
『プロテインです。トレーニング後30分以内が
摂取のゴールデンタイムなんですよ。』
・・・さては、その時間稼ぎのために俺をここへ?・・・
結局、20分。ちゃんと歩かされた。 今日はかなり歩いた。
燃焼しすぎて・・・。 腹が減ったぁ!
よし! 店を探そう。
こういう路地にお宝があるんだよなぁ。
・・・・・。 勘がハズれたか?
あれは? タイ料理。
うん? 火鍋・・・。
この漢字表記。 すでに日本ではない。
なぜか、「燃えよドラゴン」が頭に浮かんだ。
この暑い時期に敢えて火鍋か。うん、良さげ。
よし!もう一汗、かこうじゃないか!
『孤独のグルメ』シーズン9 第7話(中編)に続く