NHK第一ラジオ。 2021年12月2日放送のテーマは、

 

「『沈黙の臓器』すい臓に気をつけよう」です。

 

帝京大学医学部付属病院教授の外科医、佐野圭二さんにお話を伺い

 

ます。 第4話のテーマは「すい臓と糖尿病の関係とは?」です。

 

聞き手は大久保彰絵キャスターです。

 

 

 

 

佐野さんは、日本すい臓学会の指導医もされています。

 

佐野さん、よろしくお願いいたします。

 

 

よろしくお願いします。

 

 

すい臓と糖尿病には大きな関係があるのでしょうか?

 

 

そうです。

 

インシュリンというホルモンの分泌が減ることで起こるのが糖尿病です。

 

※ 膵臓の疾患で起こる糖尿病を膵性(スイセイ)糖尿病といい1型、2型

のいずれにも分類されません。

 

 

このインシュリンは、すい臓で作られています。

 

そのため膵炎やすい臓ガンといったすい臓の病気になっても、インシュ

 

リンの分泌量が低下してしまい、その結果糖尿病を引き起こす危険性

 

が高まるのです。

 

 

 

 

あぁ。 

 

すい臓の病気が原因で、インシュリンがあまりつくられなくなると

 

糖尿病になってしまうという事ですね。

 

 

そうです。

 

すい臓の病気が原因の糖尿病のことを”膵性(スイセイ)糖尿病”といい

 

ます。

 

国内の糖尿病患者さんは約300万人いますが、そのうち”膵性糖尿病”

 

の患者さんは、凡そ2万人ほど。

 

割合としてはあまり多くありませんが、糖尿病の患者さん全体が年々

 

増加していますので、”膵性糖尿病”の患者さんの数も増えていくと考え

 

られます。

 

 

その”膵性糖尿病”の症状にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

 

糖尿病の典型的な症状である、●口の渇き ●排尿回数が増える 

 

●急激な体重減少、などが多いです。

 

 

他にも、”膵液”の分泌の低下による食べ物の消化不良や下痢などの

 

症状がみられることもあります。

 

そして、病状が進行すると、低血糖を起こすこともあります。

 

 

低血糖ですか?!

 

一般的に糖尿病の人は、血糖値が高くなるといわれていますよね?

 

 

はい。 

 

すい臓でつくられるホルモンにはインシュリンだけではなく、血糖を

 

上げる働きをするグルカゴンというホルモンもあります。

 

 

”膵性糖尿病”の患者さんはグルカゴンの分泌量も低下するので、

 

血糖を上げることが出来なくて稀に低血糖を起こします。

 

 

低血糖になるとどんな症状がありますか?

 

 

まず、異常な空腹感やだるさ、集中力の低下や喋るのが困難になる

 

といった症状がみられます。

 

 

しかし、”膵性糖尿病”の場合、ごく稀にですがこうした症状が現れず

 

突然、昏睡状態に陥ってしまうこともあるのです。

 

 

糖尿病というと合併症に注意!とよく言われるのですが”膵性糖尿病”

 

の場合はどうなんでしょうか?

 

 

もちろん。 そのまま放置していると合併症が起こります。

 

 

”膵性糖尿病”の患者さんの死因の多くは、一般的な糖尿病と同じく

 

合併症によるものと言われています。

 

 

 

糖尿病の”3大合併症”には手足の神経に異常をきたして足先や足裏、

 

手の指などが痛む「神経障害」、網膜にある血管が蝕まれて進行する

 

と「失明」、腎臓の血管が蝕まれて機能が低下すると「人工透析」、

 

この3つが挙げられます。

 

 

 

 

「神経障害」、「失明」、「人工透析」といった合併症が起こりやすくなるの

 

ですね。

 

 

はい。 

 

その中でも、「神経障害」を起こす確率は一般的な糖尿病よりもやや

 

高いと言われています。

 

 

また、合併症で肺結核などの感染症を起こす確率も、”膵性糖尿病”の

 

ほうがやや高いという報告もあります。

 

 

合併症を防ぐにはどうしたらいいでしょうか?

 

 

”膵性糖尿病”か一般的な糖尿病かに拘わらず先ずは病気の早期発見

 

が大事になります。

 

 

口が渇いたり急激に体重が減少するなどの症状がある場合は、速やか

 

に糖尿病専門医による適切な治療を受け、血糖コントロールしてもらう

 

ことが大事です。

 

 

そもそも、”膵性糖尿病”にならないためにはどうすればいいのでしょう

 

か?

 

 

一番は、すい臓の病気を予防することです。

 

”膵性糖尿病”の主な原因はすい臓病ですが、およそ40%が慢性膵炎、

 

凡そ8%が急性膵炎ですので併せて50%近くが”膵炎”によるものです。

 

 

 

 

お酒をたくさん飲み過ぎると”膵炎”になりやすいので飲み過ぎを控える

 

ことも予防につながります。

 

 

具体的にはどのくらいが許容範囲内なんでしょうか?

 

 

一日のアルコール摂取量の許容範囲は20gと言われていますので、

 

ビールならば中瓶1本。 日本酒なら1合ほどになります。

 

 

他には気を付けることはありますか?

 

 

脂っこい食事の摂り過ぎや、ストレスを溜め込みすぎることも”膵炎”の

 

原因になりますので、食生活や普段の生活習慣に気を付けて頂きたい

 

と思います。

 

 

 

では、最後に。 今日のポイントをお願いします。

 

 

● 普段の生活での予防 

   特に、お酒には要注意!

 

 

佐野さん、ありがとうございました。

 

 

ありがとうございました。

 

 

最終話は、「すい臓に優しい生活を」というテーマでお話を伺います。