NHK第一ラジオ。 2021年11月22日放送のテーマは、

 

「歯だけではない歯みがきのねらい」です。

 

鶴見大学歯学部名誉教授の花田信弘さんにお話を伺います。

 

聞き手は大久保彰絵キャスターです。

 

 

 

花田さん、よろしくお願いいたします。

 

 

よろしくお願いいたします。

 

 

 

今朝は、「まずは栄養バランス」というテーマです。

 

虫歯と栄養バランスって関係があるんでしょうか?

 

 

ええ。 非常に強い関係がございます。

 

私は、お口の中の細菌が歯や全身にどのような影響を及ぼしているのか

 

っていうのをずっと研究してきたんですけども、食べ方でお口の中の細菌

 

のバランスが大きく変化するという事が分かってきました。

 

信宏だってさ。 信弘が正解。

 

 

お口の中の細菌のバランスによって虫歯や歯周病が起こりにくい環境

 

なのか、起こりやすい環境なのかが決まってくるんです。

 

 

その根本原因は栄養バランスなんです。

 

 

 

では、具体的にどういう事に気を付けたらいいのでしょうか?

 

 

ポイントは、糖類の摂り方。 

 

糖類っていうのは、お砂糖のような甘い糖のことも糖類って

 

いってますけど、(ご飯に代表される)この糖類の摂り方と

 

栄養バランス。 この2つがポイントです。

 

 

 

では、一つずつ伺っていきます。

 

まず、糖類の摂り方。 

 

これは、どんな事に気を付けたらいいでしょうか?

 

 

糖類の代表が砂糖なんですけども、この砂糖がお口の中を汚す張本人

 

なんです。

 

 

 

 

砂糖が虫歯菌(ミュータンス菌)の酵素によって粘着性のあるグルカン

 

というものになるんですけども、それでお口の中が汚れていくわけです。

 

ミュータンス菌の電子顕微鏡拡大画像

 

 

ですから、できるだけ糖類は摂取して欲しくないんですがゼロにするのは

 

ムリなわけなんです。

 

特に気を付けて欲しいのは、隠れた糖類っていうんですかね。

 

ソースやケチャップなどの調味料にもこの砂糖が使われているんです。

 

 

 

たしかに。

 

無意識のうちにたくさんの砂糖を摂っているかも知れませんね。

 

 

そうですね。 

 

この砂糖の摂り過ぎっていうのは、虫歯だけではなくって肥満の原因

 

にもなるという事なので世界的に問題になっています。

 

 

WHO(世界保健機構)は、生活習慣病や虫歯を予防するために、

 

糖類は1日の摂取量を1日の摂取カロリーの5%未満にすべきだ

 

という指標を出したわけです。

 

 

この指標だと、成人女性で普通に生活されている方であれば大体、

 

1日に2000㎉なんですけども、5%未満は100㎉までということに

 

なります。

 

 

甘いと感じる清涼飲料水だと1本500mlでその100㎉になりますよね。

 

 

そうですね。 

 

甘いと感じる清涼飲料水だと1本500mlで超えてしまいます。

 

甘いと感じない清涼飲料水でも1本で100㎉ぐらいになっています。

 

 

へぇ~!!

 

 

甘いものを食べていないから安心ではないわけです。

 

思った以上に、私達日本人は砂糖を摂り過ぎているんですね。

 

 

で、これを機に砂糖は摂取カロリーの5%未満っていうのを意識した

 

食生活をして頂きたい、と思います。

 

 

 

はい。 そして、続いてのポイント。 栄養バランス。 

 

これは、虫歯や歯周病と具体的にどんな関係があるんですか?

 

 

虫歯や歯周病になるという事は、その背景にある栄養のバランスが

 

崩れているという事を示しているんです。

 

 

歯周病は、歯を支える組織が崩れて起こるわけです。

 

つまり、歯を支える組織の細胞が再生できていないという事なんです。

 

細胞が再生するのに必要な必須アミノ酸や、必須脂肪酸

 

摂れていない事を示しているのが歯周病という事になります。

 

 

ですから、健康寿命を維持するために3大栄養素であるたんぱく質、

 

脂質、糖質をバランスよく摂ることが推奨されています。

 

これは、歯にとっても同じく大切な事なんです。

 

 

 

現在の日本のように食べ物があり余っている飽食の時代ですけども、

 

たんぱく質低栄養、たんぱく質が足りない、必須アミノ酸が足りないという

 

栄養失調の人が多いわけです。

 

 

ですから、歯を守る栄養バランスの目安っていうのを「炭水化物6割」

 

「たんぱく質2割」「脂質2割」。まあ、厳密には微妙な数字になっている

 

んですが、大体6割、2割、2割、というふうに覚えて欲しいと思います。

 

 

この比率が崩れていると栄養バランスが崩れているという事になります。

 

 

さらに、歯のトラブルがある人っていうのは、固い物や繊維質を摂らない

 

ので益々、栄養バランスが悪くなって歯がさらに悪くなっていくといった

 

悪循環に入っていくわけなんです。

 

 

歯がダメになると認知症の発症リスクも飛躍的に上がるそうですね

 

 

ですので歯科医に行って治療するという事も非常に重要なんですけども、

 

先ずは、日常的な栄養バランスを摂っていくという考え方が最も重要だと

 

思っていますし、学習して身に付けて頂きたいと思います。

 

 

 

では、最後に。 今日のポイントをお願いします。

 

 

●歯を守る栄養バランスの目安は「炭水化物6割」

 

  「たんぱく質2割」「脂質2割」。

 

 

花田さん、どうもありがとうございました。

 

 

ありがとうございました。

 

 

 

次回は、「全身を巡る歯周病菌の恐怖」というテーマでお話を伺います。