NHK第一AMラジオ。 日曜日の午前6時台は『落合恵子の絵本の時間』。

 

2021年9月19日の放送は、絵本 『わたしのいもうと』 

 

松谷みよ子:作 味戸ケイコ:絵

 

 

           「わたしを いじめたひとたちは
          もう わたしをわすれてしまったでしょうね


              あそびたかったのに
            べんきょうしたかったのに」

 

 

 

 

一冊の絵本を開くとき、アナタのもう一つの旅が始まります。

 

 

絵本は、生まれて初めて本というものに出会う最も小さな人から、年齢制限なし。

 

 

深くて豊かなメディアです。

 

 

日曜日の朝6時、短い旅をご一緒に。

 

 

 

 

 

 

本書は、偕成社の[絵本平和のために]シリーズに所収された。

 

後ろを向いて立つ小学校4年生の女の子は、決してこちらを振り向いてくれない。

 

うつむき、しゃがみこんで顔を下げたままだ。

 

 

 

 

 

その影が晴れることはない。

 

転校した学校で言葉遣いを笑われ、くさいぶたといわれ、

 

配る給食を受け取ってもらえず、遠足先でも独りぼっち。

 

 

            


やがて妹は学校へ行かなくなる。

食事もとらず、口もきかず、やせ衰えた妹は、

母親の必死の看病で一命を取り留める。


         



しかし月日は流れ、妹をいじめた子達は中学生になり、

やがて高校生になり、

学校へ通う姿が見られるようになるのだが、

妹は身じろぎもせず部屋で独り過ごすのだ。


そしてある日、妹はひっそりと息をひきとる。

「わたしを いじめたひとたちは
もう わたしをわすれてしまったでしょうね

あそびたかったのに
べんきょうしたかったのに」

 

 

 

 

44刷。15万部。絵本としての発行部数の健闘が、これほど物悲しく

 

思えたことはありません。

 

いじめている方はすぐに忘れても、いじめられた方は忘れられるものではない。

 

そのことの恐ろしさを伝えようと本書の執筆に取り掛かった松谷であったが、

 

本音はこの本を「いじめなどがなくなり、忘れ去られる本であってほしい」

 

と願う。