『孤独のグルメ』シーズン6 第2話。 淀橋市場の食堂で食べたガッツリ朝食のお話。

 

                                 新宿区大久保             

 

『はい。 はい。 えぇ。 ・・・          

なんとか今日の11時までに間に合わせたいんですよ。・・・』

 

『あぁ。そのコーヒーカップ、隣のと入れ替えましょう。』『こうですか?』『そうですね。』

『一番端っこのはドイツ製で、あとのがフランス製なんですよ。』『なるほど!』

        『はい。』『井之頭さん。』    『この花はどっちの方がいいですかね?』

『あぁ~。このカップの色味だと、青の方がいいかも知れませんね。』『はい。』

『はい。 はい。 じゃあ、お待ちしております。』

『はぁ~。』                 

『カナちゃ~ん、全然センスない。 この端の2つ、逆にして!』

『この花も青はあり得ないと思う。』 

        『あ・・・。でも、井之頭さんが

         こうした方がいいって・・・。』         『え?』『あ、いやいや。』

      『ちょっと待って。あー!逆だなー! 

       どこ製とか全然、関係ないー!』  『花も赤にチェンジ!ねぇ!』

        『あはははははー。』       『あっはっは。 あ~可笑しい~。』

『さ、直そう。』『はい。』      

『お花をここにも。』『いいと思います。』『はい。』

早朝から始めた甲斐あって、なんとか形になってきたな。

  『あとは、シュガーポットとスプーンですね。』

『はい。ようやくゴールが見えてきました。 井之頭さん、少し休憩しませんか?』

『えぇ。』『ふたりも。』『はい。』     

『私、自分のお店で自分が可愛いと思うカップを

 展示販売するの、ずーっと夢だったんです。 お気に入りのカップで飲むと

美味しさが倍になるような気がしませんか?』『しますね!』『ですよね!』

『井之頭さんにお願いして良かった。他の方だったらこうは往かなかったと思います。』

『あ、いえいえ。』  

『だって、急な無茶ブリにも応えてくれるし、早朝にも拘らずこうして準備まで

手伝って下さって。井之頭さんって本当にいい人ですよね。』『いや、いい人って。』

『滝山さんがそう言っていました。凄くいい人だから

頼めば何でもやってくれるよって。』 『滝山が?!』

『はい!』『佐倉さん、ちょっといいですか?』

            『・・・。』                 滝山っ!ムキー

 

         『カナさん、これどうですか?』

         『うん、可愛いって思うよ。』

『井之頭さんのお陰で本当に助かりました!これで、なんとか

今日のイベントに間に合いそうです。』『お力になれて良かったです。』

『ありがとうございます。』『夢の第一歩、頑張って下さい。それでは。』

上手く往くといいな。

         あぁ。 気持ちいい朝だ! 

8時半か・・・。 4時起きだったからなぁ。

ひと仕事、終わらせて・・・。

               腹が・・・。            すっからかんだ!

店を探そう!

この時間に開いてる店・・・。       

モーニングのトーストじゃ、物足りない。 米。 ご飯食べたい。

と、なると・・・。 牛丼の店かぁ?!

えっ?! こんな所に?!

              市場?!

市場だったら、早朝からやってる食堂とかあったりしないかな?

『はい。』『おはようございます。トラック

だけお気を付け下さい。』

 

青果市場みたいだな。      

   ここで働く人達が行くような店。 ないかな? この建物。

怪しいなぁ。                

                      あったぁ!               

  やっぱり!あったぁ! やってる、やってる! この看板と暖簾の感じ。

グッとくるじゃないか。 よぉし! 今朝は市場飯だ! 

『いらっしゃいませ。すぐに片付けますんでこちらへどうぞ。』

         如何にも市場の食堂。 この人たちも正に今が昼飯時。

『お客さん、温かいお茶とお水どちらがいいですか?』

『お水をお願いします。』『はい。』

『もしもし、はいはい。お疲れ。』   『はい、どうぞ。』

『キャベツがギタ目で、ジャガイモがダリ半。 』

市場人しか分からない単語ばかり。

さて。 ここで食うべきモノは何だ?

へぇ~。生姜焼きはバラとロース、両方あるのか。 ライス50円引き。面白い。

増しと引きがあるのか。        

カレーは月曜。 鮪は金曜。 今日、何曜だっけ?!

え? え? 何?このカレンダーの数?!

『野口さん、お待ち!』『はい。お待たせしました。炒飯大盛です。』

   お、アジフライ! 塩鮭定食もいいなぁ!

    なるほど。 コッチは副菜か。     アジフライにも惹かれるけど、

うん? トマト酢漬け?        今の気分は労働後の肉。            

シーズン6 第2話。 淀橋市場の豚バラ生姜焼き定食(中編)へ続く