『孤独のグルメ』シーズン5 第10話。 退院直後に食べた亀戸のヤンチャ飯のお話。

 

      『井之頭さん、お食事で~す。』/    『う~ん?』

ああ、寝ちゃった。 もう、3日も寝たきりなのに・・・。

       『どうぞ、お大事に。』『はい。』  『井之頭さん、どうぞ~。』

        『はぁ~、痛っ。はぁ~。』    『どうぞ~。お掛け下さい。』

                               『痛っ。 はぁ~。』

『あ! いたたたたっ!』 『あっと!』

            『あっあ~・・・。』      

       『今日はどうされました?』  『チョット仕事中に腰を痛めてしまいまして。』

『・・・辛そうですね。 レントゲン、撮りましょうか?』

    『どうぞ。 こちらへ』/                 『う!』

       『はっ!』    『ああっ!』    『大丈夫ですか!』

            『大丈夫でもないです。』

『あ~~・・・。 少し骨がズレてますねぇ。』

        『痛むでしょう。』『はい。』    『前に何かされましたか?』

      『え~、5年ほど前に肋骨を骨折して・・・・・。』『なるほど。他には?』

      『え~と、・・・。3週間ほど前に、ヨガ教室で腰をちょっと・・・。』

                                 『よっ。』

               『いやいや、いいよ!』        『腰、打った!』

『えっ・・・。 井之頭さん。 ヨガ教室に通われてるんですか?』

『え、あぁ。いや、通ってる訳じゃないんですけど。 知り合いの

女性がヨガをやってまして、それを真似してちょっと・・・。えっ?』

『あ。いや、一瞬井之頭さんのレオタード姿を想像してしまいまして・・・。』

『いや、まさか!あはは、痛っ!』 『いや、申し訳ない。』

       『どうでしょう。入院しましょうか。』 『えっ!入院!』『えぇ。』

  『一応、神経のほうもしっかり検査しましょう。』

そうか。参ったなぁ。師走の忙しい時に。    

『えっ!』 『「なんでこんな忙しい時に」って思いました?』

『えぇ。まぁ。』 『こういう時こそ、無理をしない事です。』

『大体それで悪くしちゃうキズが多いんです。』

『先ずは完全に身体を休めて、しっかり検査をしましょう。』

♪焦りは禁物、でっ・す~、よ。

『痛みはいかがですか?』『えぇ、だいぶ楽になりました。』

『それは良かったです~。はい、どうぞ~。』

     ここでは3度の食事だけが楽しみだ。   『いただきます。』            

         まず、カレイから。

う~ん・・・。             

        やっぱ、味薄い。          あったかいし、最近の病院食は

        驚くほど美味しくなってるんだけど。 

チョットだけ物足りない。そのチョットがもどかしい。

おでんかぁ。            

う~~~ん。             

                    チーン

魚とご飯、ジャガイモの味噌汁。        

完璧な栄養バランスなんだけど・・・。ゲッソリ

 

 

 

             パンチ(食べた時の衝撃)がない。

 

         巾着もいいんだけど・・・。

胃は元気なだけに、3日目ともなると舌が駄々をこね始めている。

 

『お食事、終わりましたかぁ~。』 / 

      『ごちそうさまでした。』      『えぇ。』 『センセイも仰ってたじゃない

      『あら!またお仕事ですかぁ?』       ですか。焦りは禁物って。』

『あぁ、そうでした。』『♪焦りは禁物、はい、おしまい。』『すみません。』

    『はい、どうも。』              『完食ですか。いいですね。』

『明日は退院です。 大丈夫そうですね。』

    『お陰様で、いい骨休めになりました。』『じゃ、おやすみなさい。あっ。』

『そうだ、井之頭さんは餃子お好きですか?』『餃子ですか?!好きです。』なんで餃子?

『餃子を、お酢とコショウで食べたこと、ありますか?』

       『お酢とコショウで?!ないです。』  『君は?』『ないです。』

『お酢とコショウ。それにちょっと辣油を垂らすと、

とても美味しいそうです。』   ウォー!それ絶対美味そう!餃子、食いてぇー!

『井之頭さん。』『はい。』

『どうせ出たらまた無理をなさるんでしょうから、ここでは

きちっと睡眠をとって下さいよ。』   『わかりました。』

『では、おやすみなさい。』     『おやすみなさい。』

       『餃子、食べに行こっか。』『お願いします。』         ポーン

なんで入院患者にあんなコト言うかね。

頭の中が餃子でいっぱいになったじゃないか!   あぁ、餃子食いてぇ。

            『あぁ~。』 夜が長いなぁ。

『・・・塩っぱくて味の濃いものを食べたくってさぁ・・・。

明日来てくれる時、塩辛とか持ってきてよ。』 うわぁっ! 塩辛か!

                             塩辛で熱いご飯、バクバク!

     堪らん! もう!どいつもこいつも! 胃が身悶えして眠れなくなりそうだ!

『退院ですね。』 『はい。』

『昨夜はちゃんと眠れましたか?』

『いえ、餃子と塩辛が朝方までどんちゃん騒ぎ・・・。』『えっ!』『いや、眠れました。』

『どうか無理なさらないで下さいね。』『♪焦りは禁物~。』

               『♪はい、オッケー。』 『ありがとうございました。』『お大事に。』

            東京都江東区亀戸    思い切って入って良かった。メンテばっちり。

頭の中の整理も出来たから、すぐ取り戻せる。   亀戸天満宮。

 快復のお礼も兼ねてお詣りしていくか。        いや・・・。

              それよりも・・・。         元気になったら・・・。

               腹が・・・。              減りました。

シーズン5 第10話。 江東区亀戸の純レバ丼(中編)へ続く