「……はぁ」
20分程前の、“麻穂は“嫉妬”という言葉を知らない”なんて思った自分を全力で殴りたい。
「ごめんね、翔香ちゃん。急に泣いちゃって。迷惑じゃなかった……?」
麻穂は、今あった事を話しながら僅かに数分泣いていただけだった。
エントランスは未だ、大歓声に包まれ、とりあえず駆け込んだトイレは別格のように静まり返っている。
「全然迷惑何かじゃないって!」
こういう時、何か気の利いた事でも言えたら良いのに、私にそんなスキルなんて無い。
とりあえず出よう、と言う麻穂に連れられトイレを後にし、まだ葵様が通っていない事を期待してエントランスへ向かう。
「「「キャーッ!!!葵様がこっち来るぅぅぅぅッ!!!」」」
「ごめんなさいね。可恋、後お願い」
「っ、ちょっ、社員!?」
私が何とかして麻穂を励まそうとしていると、周りで一際大きな歓声が沸き上がる。
「んもうッ。こーんな可愛いレディーを泣かせるなんて、どんな愚か者かしら?」
「ぁ……あ…………あッ……」
パクパクと口を動かしながら何か言おうとしている麻穂。
その目先には、今まで見たことも無いような、絶世の美女。
これが…………。
この人が、あの、有名な ━━━
「葵様ぁッ……!」
私の頭に浮かんできた名を麻穂が代弁して叫ぶ。
「ふふッ、そ、私が高嶺あ・お・い♡お名前は?」
何だろう。
この人には、惹きつけられる何かがある。
特に肌を露出した服を着ているわけでもないのに、立っているだけで醸し出される色香。
「妃、翔香……です」
同じ空間に居るだけで圧倒される、威厳、存在感。
そして、沈魚落雁したい程の美貌。
そんな人に、気後れしながらも、名乗る。
「おっ、大谷麻穂ですっ、あの、あの、何で私が泣いているって分かったんですか?あんな、遠くから」
「あぁ、貴女があの大谷……。━━━ 分かるわよぉ。雰囲気で♡」
雰囲気って何だ!?
「麻穂ちゃんと翔香ちゃんね?ヨロシク♡」
本当に、この人40代なんだろうか……?
「麻穂っ!」
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