かみうち内科クリニック

かみうち内科クリニック

令和元年7月8日に京都市二条駅前に開業しました。院長神内謙至です。糖尿病・1型糖尿病関連の記事を中心につづっていきたいと思います。
私自身、15歳発症の1型糖尿病です。
公式サイト https://kamiuchidm-clinic.com/

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これまで、かみうち内科クリニック公式ブログをこのアメーバブログで作成してきましたが、この度、かみうち内科クリニックのホームページ内にブログ枠を設けました。引き続き糖尿病についての情報発信を行っていきます。このアメーバブログはこのまま残しますが、今後は新規の記事を読む場合、下のかみうち内科クリニックホームページからご覧ください。

 

 

今後とも、よろしくお願いいたします。

 

インスリン分泌刺激作用により次第に薬効が乏しくなる2次無効の原因となりうるため、高用量は処方しないようにします。グリメピリドは2mg、グリクラジドは40mgが実質的な最大量と考えます。インスリン分泌促進作用の強いグリベンクラミドは使用するべきではなく、処方されている場合には、グリベンクラミド1.25mgであればグリメピリド2mg、もしくはグリクラジド40mgを目安として変更するのがよいでしょう。

重症低血糖が死亡や認知症のリスクを引き起こす可能性 (Bonds DE, et al: BMJ. 340: b4909, 2010) (Whitmer RA, et al: JAMA. 301: 1565-1572, 2009)、さらに運転中の重症低血糖による交通事故の危険性も認知されるようになり、低血糖予防の必要性は近年高まっています。SU薬は作用時間が長く、特に肝・腎障害のある患者や高齢者では遷延性低血糖を起こしやすいため、減量や中止を考慮しておきます。

SU薬は朝服用で夕食後も効果が続くことがあるため、

「食事量が減ること」

「食事の遅れ(特に昼食)」

「普段しないような強い運動(の後の夜間・睡眠中)」

が低血糖の原因になると知っておくとよいでしょう。

主なものは
グリベンクラミド(オイグルコン®、ダオニール®)
グリクラジド(グリミクロン®)
グリメピリド(アマリール®)

です。ビグアナイド薬と同様に、1950年代には、SU薬であるトルブタミド(ラスチノン®)が使用されており、歴史のある薬剤です。


膵β細胞膜上のSU受容体に結合しインスリン分泌を促進します。HbA1cの比較的高い(8~9%台)やせ型の2型糖尿病患者に有効であり、血糖を速やかに低下させます。注意点として、まずは、低血糖の危険性があります。そして、2種類以上のSU薬の併用や速効型インスリン分泌促進(グリニド)薬との併用は薬理作用上意味がありません。
SU薬を処方する場合、まず1型糖尿病の鑑別が必要です。特に緩徐進行性1型糖尿病は臨床的に2型糖尿病と判断がつきにくいですが、SU薬を使用すると、インスリン分泌の枯渇を速めてしまう恐れがあるため、抗GAD抗体などの膵島関連自己抗体、内因性インスリン分泌能を血中・尿中C-ペプチドで評価することが重要です。

以上、注意点についてはこまごまと述べましたが、実際には、臨床で使用する際に、単剤で低血糖をはじめとする重篤な副作用はほとんどなく、経口血糖降下薬の中では使いやすい薬といえます。特に、高齢者の場合は、低血糖などの副作用が出た場合、その影響が強く出るため、若年者と比べて糖尿病薬を処方する場合には注意が必要です。低血糖のリスクがあるSU薬は当然のことながら注意が必要ですし、ビグアナイド薬も高齢の場合は使いにくいです。DPP-4阻害薬は心血管イベント抑制効果はないものの、副作用をそれほど気にせずに処方できることが最大の利点だと考えます。
2015年、DPP-4阻害薬に週1回製剤が発売されました。仕事が忙しく休みの日なら飲むことができる方服薬回数・量をできるだけ減らしたい方、家族が服薬管理している場合などには試す価値があると思われます。

リナグリプチン、テネグリプチン以外は腎機能障害のある患者では排泄が遅延するおそれがあり、投与量を減らす必要があります。ビルダグリプチンは、重度の肝機能障害のある患者では禁忌です。急性膵炎を合併したとする症例報告がありますが (Sue M, et al: A case of severe acute necrotizing pancreatitis after administration of sitagliptin. Clin Med Insights Case Rep. 6: 23-27, 2013.)、今のところDPP-4阻害薬により急性膵炎の頻度が上昇したとする報告はありません。
SU薬と併用した場合にのみ、インスリン分泌が急激に回復し、低血糖を起こすリスクがあります。シタグリプチンが発売後にSU薬との併用で、意識消失を含む重篤な低血糖の副作用が報告されたため、SU薬で治療中にDPP-4阻害薬を追加投与する場合にはSU薬の減量が必要となっています。しかし、DPP-4阻害薬単剤では低血糖のリスクは低いです。

副作用ですが、DPP-4阻害薬は最近発売された薬剤であるため、極めて詳細な報告がなされています。

 

SAVOR-TIMI 53試験で、プラセボとの比較で心不全による入院が1.27倍増加する結果心不全の発症が増える報告がありますが、現在のところ機序は不明です。ただ、心不全による入院リスクの増加は投与開始後12か月後くらいまでに見られること、特に心不全既往や慢性腎疾患がある場合に顕著であることが示されています。(Scirica BM, et al : Heart failure, saxagliptin, and diabetes mellitus: observations from the SAVOR-TIMI 53 randomized trial. Circulation 130(18) : 1579-88, 2014)

また、DPP-4はT細胞などの免疫系細胞表面にもCD26として発現する分化マーカーとしても知られています。そのため、免疫系に変化を与えるとされており、鼻咽頭炎や尿路感染症のリスクが上昇することが報告されていいます。(Amori RE, et al : Efficacy and safety of incretin therapy in type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis. JAMA 298(2) : 194-206, 2007)。また重篤な副作用として、水疱性類天疱瘡の報告もあります。

シタグリプチンリン酸(グラクティブ®、ジャヌビア®)
ビルダグリプチン(エクア®)
アログリプチン(ネシーナ®)
リナグリプチン(トラゼンタ®)
テネリグリプチン(テネリア®)
アナグリプチン(スイニー®)
サキサグリプチン(オングリザ®)
週1回製剤として、
トレラグリプチン(ザファテック®)
オマリグリプチン(マリゼブ®)
と非常に種類の多い薬剤です。

作用機序は、インクレチンであるglucagon-like peptide-1 (GLP-1)、glucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP)の分解酵素DPP-4の選択的阻害により血糖依存的にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制します。日本で2009年に発売された後、現在までに心血管イベント抑制効果についての明確なエビデンスは出ていません。
 

同じインスリン抵抗性改善作用を持つメトホルミンとピオグリタゾンですが、作用機序は違うため血糖低下の程度は患者によって異なります。ピオグリタゾンは処方してみないと体重が増加するかどうかわからない難しさがあります。近年、PROactive試験の結果については批判的な意見があり(ピオグリタゾンが心血管疾患の予防効果があるとする報告はこの一つしかないのです)、ピオグリタゾンの心血管疾患の進展予防効果については疑問があることは確かであるため、どうしても処方の優先順位は下がってしまいます。しかし、数種類の経口血糖降下薬でも血糖コントロールが今ひとつで、あと1剤追加するときにピオグリタゾンを選択すると、劇的に改善する場合があることも事実なのです。HbA1cが低下することこそが、合併症予防の有用なマーカーです。体重増加のリスク軽減のため、ピオグリタゾンの通常用量15mgの半量から開始するのもよいでしょう。

海外の疫学研究において、ピオグリタゾンを使用した患者の膀胱癌の発症率がわずかに上昇したとする報告があり、このことをふまえ、膀胱癌治療中の患者には使用せず、膀胱癌既往患者への使用は慎重に判断する必要があります。添付文書上はピオグリタゾンを処方する際に膀胱癌のリスクを説明すること、との記載があります。ただ、今のところ前向き試験では、膀胱癌の発症リスクが明らかに上昇することを示した報告はありません。