まにのタイ・ヒーリングなブログ



最近「タイ・ヒーリング」のトレーニングをしていてよく思い出すのが2009年の春にタイのカオラックっていう小さな村で出会った80過ぎの老人、ヌアーンの言葉。


『ゆっくり ゆっくり』


タイマッサージで大切なことはたくさんある。例えばそれは『セン』(エナジー・ライン)。

「セン・スマナ」は臍からこことこをを通って・・・

「セン・カラタリ」は臍からこことここを通って・・・

って言うことなら知識としては知っているし、教えられた通りにトレースすると効果を実感出来るかも知れない。


でも、そのセンを、そしてそこを流れるルム(エナジー)を感じるには結局その知識もちょっと脇に置いて、ただそれに触れるしかない。

頭の中の思考が一瞬でもいいから沈黙してくれないとそれには触れられない。


だから

『ゆっくり ゆっくり』


彼が教えてくれたテクニックは超簡単。

プレスする時にこう数える

『ヌーン、ソーン、サーン、(そして)、サーン、ソーン、ヌーン』

(1-2-3- -3-2-1 )


合計7秒。加圧が5秒で最後の2秒でリリースする。

これはとっても合理的で、ゆっくりと中心に向かって圧がしみ込んで行く。


そして数字をカウントすることでマインド(思考)が脇に置かれる。

さらに、1-2-3の後には空白の1秒がある。

一圧し一圧し、沈黙に導かれる。


ヌアーンは言う

「腰痛なら5分もあれば治せる。だがそれはワシの仕事ではない」


もちろんおいらには腰痛を5分で治せる能力はないけれど、例えあったとしてもやっぱりそれは自分の道ではないね。

それはマッサージによる治療を否定しているワケじゃもちろんなくって、多様な道の中から自分はどの道を選択するのか?って話。

あれもこれも、は無理だからね。



(以下は当時の「MIXI」の日記から)__________________


約束の時間の30分ほど前(日本人なので)にDiscoveryに行ってみたら、すでにNuangと息子さんが待っていてくれた(タイ人なのに)。
Nuangは普通の、笑顔がとってもチャーミングな小さな老人だった。
握手をするとそのまま強い力でおいらの腕を引き寄せ、肩をハグしてくれた。
「お腹を冷やすから」と氷の入らない水を飲み、「英語が出来ないから」(おいらもなんだけど)といって息子さんが通訳に入ってくれた。
自己紹介をすると、息子さんがNuangのマッサージの説明をいろいろしてくれた。
息子さんが話してる間もおいらの手を握り、腕を揉んでくれた。
ゴツゴツでシワシワの彼の手からは「慈悲」とか「慈愛」とか言うとちょっと硬すぎる、もっとジューシーな熱帯のフルーツの果汁があふれ出ておいらに沁みこんでくるようだった。
ちょっと泣けてくる。

あとで息子さんが「私はそろそろ仕事に戻るので、最後に何か彼に聞きたいことは?」と言うんで
「マッサージで一番大切なポイントは?」(実は前の晩、ほとんど寝ないで考えたんだけど、これしか思い浮かばなかった)
って聞いたときに彼は
「それはひと圧しひと圧し、それが今どこにつながっているかを意識すること」
「そして、そこで何が起きているか、感じることだ」
と答えてくれたんだけど、今のおいらに感じることが出来るのは彼のシワシワの肉体から流れ込んでくる乙女のようなフレッシュなジュースだった。
ライムの搾りかすのような彼の体のどこをどうやって絞ったらあんなスイートなジュースが溢れ出して来るんだろう。

息子さんの話は続く
自分は不器用で父のようにはマッサージは出来なかったけれど、彼のマッサージは翌日・翌々日に効いてくるんだ、と。
それで、先日受けた彼の甥ごさんの施術の話になった。そういえば甥ごさんの施術も同じように後から効いて来た。
彼はNuangと同じスタイルなのか?と聞くと、半分はNuangのスタイル、あとの半分は彼のオリジナルだそうだ。
そうだなあ、甥ごさんのがハーブティならNuangのはマンゴージュースかなあ。
甥ごさんは禁欲的な探求者。ちょっとお坊さんっぽいかも知れない。
若き日のNuangももしかしたらそんな感じだったのかも知れない。

息子さんは仕事で途中から席をはずし、二人だけになったんだけど、英語のレベルが似たようなもの(でもNuangのほうが少し上だな)なんで、通訳がいなくてもあまり障害にはならないみたい。
「今年はもうマッサージはクローズしたって聞いたけど、それはもう二度としない、ということなのか?それとも来年は再開するかも知れないのか?」
って聞くと
「マッサージは今年でもう辞めたんだが、お前さん来年もまたここに来るかい?」
「はい、来ようと思いますが、、」
「よし、それじゃあ、来年もしお前さんがまたここに来たら、そのときはマッサージしてやろう」
「本当ですか?」
「うん。本当だ」
「もちろん、絶対に来ます!」
「そのときはここに来て息子に伝えなさい。ワシは山から下りてくるから」

そして
「ところで、お前さんはどんなマッサージをするのかね」
「はい、チェンマイ・スタイルなので呼吸を使って体重移動して、腕力は決して使いません。そして、ゆっくりゆっくり、、」
「うん。そうだ!ゆっくりゆっくり。それがいい」
本当は「中心から中心へ」とか「エナジーラインを」とかいろいろ言いたかったんだけど、なぜか口からは「ゆっくりゆっくり」が出て来て、自分でも「ああ、そうなんだあ」って思っちゃった。

「よし、それじゃあ」とガタゴトと椅子から立ち上がった。
ああ、もっといっぱい聞きたいことがあったのにこれでお別れかと思い、おいらも立ち上がって挨拶をしようとしたら
「ああ、そのままそのまま、座っていなさい」と言って自分の椅子をおいらの横まで持って来て
いきなりおいらの脚を掴んで持ち上げ、自分の膝の上に乗せた。

「いいかね、ここは第一ラインだが、ここはこんなふうに、ヌーン・ソーン・サーン、そしてサーン・ソーン・ヌーン」
「どうだ、わかるかな?」
「はい。セイム・セイム。ぼくらも同じですよNuang」
にっこり笑って
「うん、そうか。それはいい。ゆっくりゆっくり、だ」
さらに足首から踝周辺に移り、
「それじゃあここ(足の甲)のライン。ここはこうしてこんなふうに」(ううう~、沁みるう~)
そして、サンダルを履いたままのおいらのつま先まで圧し始めた。
さも途中でそれに気づいたかのようにサンダルを脱がせて放り投げて、またにっこり笑って頷いた。
「うん。これでいい」
お茶目な爺さんだ。

足の指の一本一本を揉んでくれて
「しかしこれ(足の指のクラック)はいかん。これはよくない。足の指はもっとこんなふうにな。いいかな?わかるな?」
「はい。セイム・セイム。同じです」
片脚の5ラインを終了し
「これで最低でも30分はかかるだろ?。両脚で1時間だ。ここから腰のポイント、こことこことここ、そして背中のライン、ここが一番、ここが二番だ」
「そして腕、ちょっと貸しなさい。ここのラインとこのライン。ここもヌーン・ソーン・サーン、そしてサーン・ソーン・ヌーンだ。わかるな?」
「そしてハンドだが、指はこう組んでこのラインをこうだ。ここまでで両側やるともう2時間だ。それに胸や肩・首・頭をやればもう3時間だな」
「そして首はここが一番、ここが二番。頭はこのライン、耳とその周辺、こことここもだ」
「ワシはワンセッションに出来れば3時間はかける。最低でも90分だな、どんなに急いでもだ。1時間はありえん」

脚と腕は片側だけだけど、結局ほとんど全身触ってくれた。もう途中から止まらない。
それとも二人が英語が苦手(爺さん、途中からはほとんどタイ語)だったから、体に触るのが一番手っ取り早かったのかも知れない。

マッサージはもうしない。教えることもない。って言ってたんだけど、結局マッサージしてもらってレクチャーまでしてもらっちゃった。
やっぱインド人の、あの一度決めた目的は決して諦めないっていうしつこさは大事なのかも知れないね。

世界で一番エンライトメントしてるのもインド人かも知れないしね。

宿に帰ってシャワーを浴びて、アヌブッダからもらったクエストの達成祝いに食事に出かけたんだけど、カオパットとビアチャンの他にもう一品、スパイシー・イカ・サラダも注文しちゃった。
食べ終って幸せな気分で宿に向かうと、後から猛烈な勢いでさっきの店の娘が二人で追いかけてくる。
おやおや、ちょっと舞い上がって忘れ物でもしたのかな?と思ったら
二人ははあはあしながら
「あのねっ、100B札とー1000B札をー、間違ってたよっ!はいっ」
って言ってうれしそうに頷きあってスキップで去って行った。
店の母ちゃんの顔はちょっと怖かったけど娘たちは天使だな。

いやあ、いーい街です、カオラックは。ちょっと食費はかかるけど。
幸せです。



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