『週刊文春』出ました。 | デニス・ホッパーの軌跡

『週刊文春』出ました。


デニス・ホッパーの軌跡

 本日発売の『週刊文春』4月28日号の「著者は語る」の欄に、先日予告した『アメリカの友人/東京デニス・ホッパー日記』の紹介記事が出ました。取材してくれた記者からは送ってもらうことになっていますが、夕方、歯科矯正をする娘の付き添いで訪れた歯医者の待合室(笑)で確認しました。この記事を読まれた方も、覚えておられたらぜひ読んでみて下さい。


 さて、今夜は訃報で物思いに耽っています。ご承知のように今夜、元キャンディーズのスーちゃん(田中好子さん)がお亡くなりになりました。何を隠そう、キャンディーズの中でもスーちゃん派であり、解散後も応援してコンサートやミュージカルの舞台などに足を運んだことのある僕としては、早すぎる訃報に言葉もありません。……

 デニス・ホッパーとキャンディーズ。――何の接点も内容にも思えますが、実際には『イージー・ライダー』がひとつの時代を象徴する記号として特別な意味を持っていたのと同じように、「キャンディーズ」もまた、ある時代の日本にとって、単なる一アイドル・グループということではなく、アーティストとファンとの関係を再定義した点でまさしく時代を象徴する記号であったと思います。それは、音楽産業の巨大なビジネス構造の中である種の反旗を翻した勇気ある存在として、そしてその彼女らの想いに共鳴したファンたちの自発的な意思が解散イヴェントを形作っていったという意味において日本ロック史上の大きなエポックとなった存在だったということです。

 その意味で、ジョン・レノンが撃たれて「これで永遠にビートルズの四人が一緒に演奏する機会が訪れることは亡くなったのだ」という現実に打ちのめされた時と同様に、またデニス・ホッパーが亡くなったことでピーター・フォンダとジャック・ニコルソンと彼とでまた集まって何かを作る(『イージー・ライダー2』であったかどうかは別として)ということが永遠に不可能となった時の無念さと同様に、スーちゃんの死によって青春の輝きの再現という夢は永遠に失われてしまったわけです。――ピンクレディのように痛々しく再結成などしてほしくはなかったからこれでよかったのだと思うことも可能ですが、絶対にかなうそうにない夢いうのはやはり必要なわけで、その意味で、わかってはいたことであっても現実にその可能性が完全に潰えたということの意味は小さくはないと考えます。僕と同様の感慨に思いをはせている人はたくさんいるだろうと思います。田中好子さんのご冥福を心よりお祈りします。 谷川建司