大雪のニューヨークから戻って
前回、ニューヨークから書き込みをして以来、かなり時間がたってしまいました。あの後も、ニューヨークでは近代美術館(MoMA)で開催中の抽象表現主義展とともに、アンディ・ウォーホルの短編映画「ポートレート」シリーズなどをエンドレス再生する展示をやっていて、その中の一編「デニス・ホッパー」の4分ほどの映像を、初めて見て来ました。これは証明用写真を撮るブースのようなところにウォーホルのファクトリーを訪ねてきた友人たちに入ってもらい、何分間か撮影用キャメラに顔を向けてじっと動かないでいてもらう様子を撮影したもので、いわば(微かに)動くポートレートという感じの作品。大きな展示室の壁に2m×2mくらいのサイズのスクリーンいっぱいに映し出される顔、顔、顔。………スーザン・ソンタグやルー・リードや岸田今日子のように律儀にほとんど動かない「ポートレート」もあるのですが、デニス・ホッパーは短い時間の中でも表情を変え、微かに「演技」しているように見受けられました。デジタル化されたというこの「ポートレート」シリーズの映像が入手可能なのであれば僕の展覧会でも上映したいところでしたが、残念ながら、今回のMoMAでの上映が終わった後だとピッツバーグのウォーホル博物館まで行かないと観られそうもありません。
ところで、ニューヨークでは帰国予定日の前夜に大雪が降り、空港機能がストップしてフライトが飛ばなくなるという災難に見舞われ、帰国が一日遅くなってしまいました。そのあおりで、早稲田大学で予定していた授業が一回できなくなり、後期の「映像文化論」という授業の最後に2回に分けて全編鑑賞することを予定していた『アメリカの友人』を、90分の授業の中でダイジェストで飛ばし飛ばし見せて解説するという中途半端な形でしか見せられなくなってしまいました。………というわけで、今回の展覧会での関連イヴェント、デニス・ホッパー大学「応用でニス・ホッパー論」集中講義第一夜の『アメリカの友人』には、早稲田大学の学生にも声をかけておきました。ギャラリーのほうは定員30名なので、「映像文化論」の履修者174名の中でまじめに全編みたいという学生があんまりたくさんいると困るのですが(笑)、まあいても10名くらいかな、と踏んでいます。
展覧会開催まであと一週間。展示準備のほうは着々と進んでいます。肝心の新著『アメリカの友人/東京デニス・ホッパー日記』のほうも、週明けくらいには見本が刷り上ったのを見られそうとのことで、1/29の展覧会初日には会場でお披露目できそうです。谷川建司