<窓外の化粧>古賀春江 1930年 神奈川県立近代美術館蔵
1933年(昭和8年)に発表された西脇順三郎、39歳のデビュー作が「ambarvalia(アムバルワリア)」。「アムバルワリア—旅人かへらず 」講談社文芸文庫 の新倉俊一さんの解説によると、タイトルは古代イタリアで行われていた穀物や葡萄の収穫祭の意。稲刈り後の秋祭りのような雰囲気を想像するといいかも、です(ざっくりすぎ…・笑)。
この詩集は戦後(1947年)、53歳になった詩人によって改作されており、「あむばるわりあ」という本にリニューアル(?)。すごーく昔の話になりますが、2作を読み比べた私は、
「言葉がきらきらしている感じがして、最初の<ambarvalia(アムバルワリア)>の方が好きだな~」と思った記憶が。
1982年6月、88歳で順三郎(呼び捨てにする(;^_^A)は亡くなりましたが、同じ時代の空気を吸えたことだけでもありがたく感じており、私にとってはほとんどカミサマ。痩せた鳥のようなお姿の写真を拝見するたび、「かっくええ」とほれぼれしていたので、アイドルといった方が正確か(笑)。
一番有名な詩は「ambarvalia(アムバルワリア)」の<天気>ではないでしょうかね。
(覆された宝石)のやうな朝
何人か戸口にて誰かとさゝやく
それは神の生誕の日。 p25
たった3行であります。これなら暗記できるぞ。教科書に載ってる、という話を聞いたことがあるんですが、ほんとですかしら。なんだかうらやましいです。ちなみに、私がん十年前に使用した高校の教科書には、「雨が瀟々と降っている」というリフレインの三好達治の「大阿蘇」が出てましたが、これ以外の詩は記憶にないです。あっさり忘れたということは、どうでもいいといいますか、ぴんとこなかったんでしょうな~。
「ambarvalia」の中で個人的に好きなのは、<太陽>。
カルモヂインの田舎は大理石の産地で
其処で私は夏をすごしたことがあつた。
ヒバリもゐないし、蛇も出ない。
ただ青いスモゝの薮から太陽が出て
またスモゝの薮へ沈む。
少年は小川でドルフィンを捉へて笑つた。p28
あと、これ。<眼>ですね。
白い波が頭へ飛びかゝつてくる七月に
南方の奇麗な町をすぎる。
静かな庭が旅人のために眠つてゐる。
薔薇に砂に水
薔薇に霞む心
石に刻まれた髪
石に刻まれた音
石に刻まれた眼は永遠に開く。p29
映像的ですね~。「圧倒的な映像美」みたいな言葉で評されるタイプの、ビジュアル表現に私は弱いんですが、文字での表現も、映像というかイメージの喚起力で好き嫌いが分かれてたのかもしれません。今ごろはっとしましたよ~。自覚するのが遅すぎるんじゃないでしょうかねえ。キャラがぼけてるから仕方ないか(笑)。
西脇順三郎「アムバルワリア—旅人かへらず 」講談社文芸文庫