台所
お勝手探検隊編 「ずらり 料理上手の台所」 (クウネルの本)マガジンハウス

新卒者のために企業が作っている、仕事内容を紹介するパンフレットってありますよね。ビジネス系の媒体の記事を書くかたわら、こういうパンフレットに載せるための、入社2~5年の若手をインタビューする仕事を何年もやってきました。最初のころは年があんまり離れてなかったんだけど、去年、取材対象の方のプロフィールを読みながら、「もしかするとすごい年齢差が…」と気づき、苦笑い。

私は中身がへらへらしてて頼りないので、インタビューの際、「怖いおばさんが問い詰めている」みたいな調子にはなりにくいと思うんだけど、それでも世代的な違いというか、<普通>と思っていることに大きな隔たりがある可能性があることを、今まで以上に忘れちゃいけないね~、といさめましたわ。

仕事の時は、「お互いの普通」をすり合わせることを大事にしてるといったらいいかな。普通にこそ、ユニークで面白いことが隠れてる、とずっと思ってるんです。たとえば、わりと最近、お話する機会のあった化学メーカーの女性は、研究のために畑やビニールハウス内の植物を観察することが日課。その時、妙に「!」という感じがして、少し詳しく伺ってみると、なんとトラクターを自ら運転し、農作業もなさってることが判明しました。

医薬品の研究職って、室内で分子構造の解析をする人、みたいなイメージがあったので、「あれま~」とびっくりしましたわ。「アウトドアですねぇ」と思わずいってしまったところ、お返事は「そうなんです。日焼け止めが大変なんです~」。彼女の仕事の輪郭を、その時、理解できるかもと感じましたよ。

インテリアの取材をしていた若いころも似たような経験を幾度かしていて、習慣化しているなんでもないこと(とご本人が思っているケースが多い)を伺えると、そのお住まいのキモなところが見えたりするんですね。毎日、掃除機をかけるだけじゃなく、お掃除する時は必ずはたきを使うとか、水拭きをするとか、細かな作業内容が分かると、「このキレイさはメンテナンスのたまものなのね」等々、その場所にしかないオリジナルな要素の片鱗をつかめたような気分になったものです。

取材という特殊な場合に臨むことがあるものの、あまりにプライベートなことなので、私はすごく親しい友達にもあんまりこういうことを聞いたことがないな~。お掃除(頻度や方法)、収納(保存食のしまい場所、Tシャツや下着のたたみ方などなど)など、暮らしの中で何気なくやってることって、元をたどれば、母親がやってたことをそのまま継承してたりしませんでしょうか~。残念なのか、当然なのか分かりませんが、生活文化ってそういうものなのかも。

「こっちの方が良さそう」と思って新しい方法を試しても、いつの間にか元に戻ってたりして、身体に染み付いてることって恐ろしいと思います(笑)。普段の暮らしぶりが分からないと、なんだかピンとこないので、私の場合は、「収納の極意」をまとめたみたいなビジュアル実用本にもあんまり興味がないし~。でも、ほかの人は、どうやってるのか、という新しい情報が気にならないわけじゃないんです。

と、前置きが非常に長くなりましたが、今日のお勝手探検隊編 「ずらり 料理上手の台所」 (クウネルの本)マガジンハウス は、なかなか見聞きできない暮らしの習慣を明らかにすべく、リネンを掛けたかごの中から、引き出し、戸棚、押し入れの中に至るまで、21名の方の台所を丹念に(しつこく?)追った労作。普段隠れている場所を白日の下にさらすような取材は、信頼関係がないと絶対にできません。登場するほとんどの方(料理研究家などなど)が「クウネル」誌上で日ごろお仕事をされているという、おつきあいの実績があるから、実現できた企画でありましょう。

どこにでもあるような古い流し台が、ぴかぴかに磨き込まれた様子のすがすがしさったらない。古いものを丁寧にお手入れしながら使っている方がたくさん登場するので、その毎日の暮らしを想像するのも楽しいし、久しぶりによそのお宅の参考になるアイディアをたくさん仕込めた気もしてます。この本は当たり、です。