第10章133偈

 

  荒々しいことばを言うな。

 言われた人々は

 なんじに言い返すであろう。

 いかりを含んだことばは

 苦痛である。

 報復ほうふく

 汝の身に至るであろう。

                      中村元博士訳

 

 

 

  解説

 

 この句は、解りやすい易しい言葉で翻訳されておりますので、解説がなくてもこのままでご理解できるのではないかと思いますが、一般的な語句解釈と仏教的な解釈が若干異なる場合もありますので、少しだけ解説させていただきます。「荒々しいことば」は「怒りを含んだ強いことば」という意味だろうと思います。「報復が汝の身に至る」は、「貴方は、仕返しされるでしょう」ということですが、仏教的には、受けるべくして受ける報いだということができると思います。「荒々しいことば、怒りを含んだことば」が悪因であり、「報復」は、「荒々しいことば、怒りを含んだことば」を発した人が受ける悪果なのです。そして、「報復した人」もまた、その悪因により、悪果を招くのです。悪果は苦しみであり、生前中も死後も、耐えがたいほどの苦しみを受け続けるのことになります。

 日蓮聖人は、「わざわいは口より出でて身をやぶる。さいわいは心より出でて我をかざる」(重須殿女房御返事)と仰せられております。

 無意識に使っている言葉が相手を傷つけているかも知れません。相手を注意するにしても、相手が落ち込まないように気遣った言葉遣いが必要でしょう。ましてや、怒りを含んだ言葉は「わざわいは口より出でて身をやぶる」で、我が身を滅ぼすことになるでしょう。中国に「覆水盆に返らず」という古い諺があります。これは、地面にこぼした水は盆に戻らない、ということから生じた諺だということです。「怒りを含んだ荒々しいことば」を発してしまって、後で「まずかったな」と思っても、もう取り返しができないのです。

                                     kenyu.o

 

  

 

 

 

 2018.11.16 撮影 大菩提寺内陣の釈尊像 ブッダガヤ