第6章86偈

 

  真理しんりが正しく説かれたときに、

 真理にしたがう人々は、

 わたりがたい死の領域りょういきを超えて、

 彼岸かなたのきしいたるであろう。

                        中村元博士訳

 

 

 

  解説

 

  誠に僭越せんえつではありますが、私の言葉で解説してみますと、「ブッダの真理のこと

 ば(法)を聞いて、そのことばを(法)を疑念なく信じ、実践する人々は、渡りが

 たい死の領域(四苦八苦の煩悩ぼんのうの世界・此岸しがん)を超えて、彼岸ひがん(絶対的な安らぎの

 世界)に至るであろう。」となります。大事なことは、自分で考え、理解し、実践

 することですから、私の解説などは、ほんの参考程度にしていただければよろしい

 かと思います。Oxford訳では、「真理にしたがう人々」を「those who live 

 according dhamma」と訳しておりますので、「生活の中に生かす、実践するとい

 うような意味合いになるのではないかと思います。

  ここで大事なことは、先ずは、ブッダの真理のことば(法)を素直に信じること

 であろうと思います。信じることができなければ実践することはできません。

  日蓮聖人は、「信無くして此経(日蓮聖人の場合は法華経を指しています。しか

 し、法華経も法句経も真理のことばとしては同じだと思います。)を行ぜば、手な

 くして宝の山に入り、足なくして千里の道を企てん(踏破とうはしようと計画する)が如

 し」(法蓮鈔)と教示しております。先ずは、ブッダの真理のことば(法)を信ず

 ること、そして、実践することであろうと思います。考え、理解しただけでは駄目

 なのです。実践しなければ彼岸に至ることはできないのです。

  日蓮聖人は、「百千合わせたる薬(いろいろ薬草を調合した病気治療に最適な

 薬)も口に飲まざれば病えず。」(一念三千いちねんさんぜん法門)と教示しております。薬を飲

 まないということは、実践しないということです。先の「信無くして」や、この薬

 の教示は、私たちが、ブッダの法を学び、行ずる上での最重要な、基本的な考え方

 や態度を示唆したものであろうと思います。先の解説18もまた併せ参考にして頂

 ければ幸甚でありす。

                                                   kenyu.o

 

 早朝のガンジス河(ベナレス) 2018.11.15撮影