第6章78偈

 

  悪い友とまじわるな。

 いやしい人と交わるな。

 い友と交われ。

 たっとい人と交われ。

                       中村元博士訳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  解説

 

   この句は、解説しなくても読んで直ぐに判る平易な言葉で書かれていますの 

  で、私の拙い解説など不要かと思います。しかし、善いとか悪いとかいう言葉

  も、実は判っているようで判らない言葉なのです。善いとか悪いとかをごく一般

  的な意味に解して実践しても一向に差し支えないと思いますが、もう少し仏教的

  に掘り下げて考えてみた方が深く理解でき、実践も実りあるものとなるのではな

  いでしょうか。そういうことで、少しだけ解説させていただきます。

   「善い友」とは、「善知識ぜんちしき」とも言いますが、修行を成就できるよう助力をし

  てくれる人、正しい道理を教えてくれる人を指します。「悪い友」と「悪知識あくちしき

  とも言いますが、「善い友・善知識」の反対と考えればよいでしょう。「いやしい  

  人」とは、考える力も弱く、浅はかで、行いや態度が下品な人のことでしょう。 

  また「尊い人」とは、「全ての面において最上の人」という風に考えても良いと

  か思います。

   日蓮聖人は、「いかに我が身は正直にして世間出世間しゅっせけん賢人けんじんの名をとらんと存

  ずれども、悪人に親近しんごんすれば自然じねんに十度に二度三度その教に随いて行く程に、つい

  に悪人になるなり。」(最蓮房御返事)と、また「悪知識は、無量むりょうの身、無量の

  善心をやぶる」(顕謗法鈔)とご教示されております。これは、要するに「悪い友

  とまじわるな。」ということです。奈良時代には既に漢訳の法句経が読まれていた

  ようです。日蓮聖人も法句経をお読みになっていたようで、聖人著述の十法界明じっぽうかいみょう

  因果鈔いんがしょうに引用している「一の法句のじゅして」は、個人的な見解ですが、聖人  

  のこの鈔の文意から推量すると、法句経第8章の113偈ではないだろうか思い 

  ます。また「法句経」の経名が記されている聖人著述の断片も現存しています。

                                            kenyu.o

 

  

   ルンビニー マーヤー堂蔵 初転法輪図   2018.11.21撮影