第5章71偈

  悪事をしても、

 そのごう(カルマ)は、

 しぼり立ての牛乳のように、

 すぐにかたまることはない。

 (徐々じょじょに固まって熟する。)

 その業は、

 灰におおわれた火のように、

 (徐々に)燃えて悩ましながら、

 愚者ぐしゃにつきまとう。

                      中村元博士訳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  解説

   この句を、このままの順序で、語句を解説しながら書き直しますと、「悪事

 (15番や16番の法句で解説した五戒ごかいに反する行為)をしても、その業(身や口や心 

 の善や悪の行為による、善や悪の結果をもたらす因)は、しぼりたての牛乳のよう

 に、すぐに固まる(結果が生じる。結実する。)ことはない。その業は、灰におお

 れた火(木炭の残り火)のように、じわじわと燃えて(結果が現れて)、悪事をし

 た人を苦しめ悩ましながら、いつまでも愚者(因果の真理を知らない無知な者。因

 果の真理を信ぜず、また大したことはないだろうと軽く見て悪事を行う者。)にま

 とい付く。」ということになるでしょうか。

  業(カルマ)は、Oxford訳では、a bad act doneとなっております。単に悪い行

 為という感じです。また愚者は、the childish oneとなっております。愚者について

 は、62番、69番法句の解説をご覧ください。

  日蓮聖人は、因果について「実に因果をわきまえざる事嬰児えいじの如し」(開目鈔)と

 おおせられております。これは、因果の法則を知らないということは、例えれば乳児

 のようなものである、ということですが、当にthe childish oneです。

  又、「悪の中の大悪は我が身にその苦をうくるのみならず、子と孫と末七代までも

 かかりそうらいけるなり」(盂蘭盆御書)、とも仰せられております。因果の法則は科

 学的にも認められていることで、個人個人の因果だけではなく、国や社会や自然環

 境の因果にも及ぶ法則なのです。このことについては機会があれば触れたいと思い

 ます。Good cause Good effect Bad cause Bad effect.           kenyu.o    

 

 

   深敬庵持仏堂に奉安した初転法輪のブッダ像

   2018.11.20 ルンビニーで偶然に取得した木像。

   不思議なご縁に感謝したい。