第1章1偈
ものごとは心にもとづき、心を主とし、
心によってつくり出される。
もしも汚れた心で話したり行なったりす
るならば、苦しみはその人につき従う。
ーー車をひく牛の足跡に車輪がついて行
くように。
中村元博士訳
解説
すべての行為(業・karman>)は、心(manas)によって作り出される。
汚れた心で話したり、行ったりすると。悪因(悪の原因)となり、悪果(悪の
結果)を招きます。これは、善因善果、悪因悪果の法則を述べたものです。
「車をひく牛の足跡に車輪がついて行く」ように、悪因は100パーセント
確実に悪化を招きます。悪果は苦しみそのものです。
日蓮聖人は、衆生の心汚るれば土も汚れ、心浄ければ土も清しとて、浄土
といい穢土(汚れた国土)というも土に二つの隔てなし。ただ我らが心の善悪
によると見えたり」(一生成仏抄)。要するに、我々個人個人の心が汚れていれ
ば我々の住む国は汚れた国になり、我々個人個人の心が清ければ我々の住む国は
清い国になるということです。
汚れた心とは、基本的には「貪即ち<むさぼり>の心、瞋即ち<いかり>の
心、癡即ち仏の教えを理解できない<おろか>な心」のことです。さらに説明し
ますと、貪は、好ましい対象に対する<愛着・執着>の心、瞋は、恨みや他に
害を加えようとする<激しい怒り>の心、癡は、仏の教えを知らない自己中心的
な<無知・おろか>な心です。仏教ではこの貪瞋癡等を煩悩といいます。煩悩と
いいますと、俗に108の煩悩があるといいますが、これは煩悩の派生的な数を
表したもので確かな数ではありません。貪瞋癡は数ある煩悩の中の基本であり、
仏教ではこの貪瞋癡を心身を苦しめ煩わす基本的な三つの精神作用という意味で
三毒といいます。
kenyu.o
The repletion
〇All existence is created by the mind.
〇The bad act produces a bad result.
釈尊絵伝「托胎」(野生司香雪画/仏教伝道協会蔵)