今月も11日が巡ってきます。
 東日本大震災において歯科医療支援のほかにもう一つ、歯科が果たした大切な役割があった。震災の犠牲となられた多くのご遺体が、ご自分のお名前を取り戻す助けとなったのが、歯科による身元確認作業だった。…人が受ける最後の医療である。
 全国から多くの歯科医師がこの作業に従事し、島根からも6名の歯科医師が派遣され身元判明に貢献した。
 身元確認作業支援では、ご遺体と向き合い死後記録として、口腔内所見を記録するデンタルチャート作成、口腔内写真撮影、X線写真撮影が行われる。
 
 

 前回までにお話した福島での医療支援の最終日、我々のチームの一人の歯科医師が浜通りへ身元確認支援作業に赴くこととなった。その際に「ライティングは歯科衛生士の右に出る者はいない。記録などの作業も歯科衛生士の知識があればできるはず。行ってみるかい?」と問われたが、その時の自分には何の心の準備もなく「行く」とは言えなかった。
 しかし、2012年11月発行の歯科雑誌「デンタルハイジーン」で、震災当時、宮城県で身元確認の陣頭指揮を執った江澤庸博先生が、今後起こりうる首都直下型地震や南海トラフ巨大地震等の大規模災害において、歯科医師の数が足りなくなる恐れもある中、歯科の専門職として口腔内を熟知している歯科衛生士の手が必要になる時が来るかもしれないと提唱なさっている。
 その江澤先生に伺うと、「身元確認作業」イコール「ご遺体を見る」ということが一般的なイメージであるならば、それは間違っている。歯科医院保管のカルテやレントゲン写真をもとに生前記録を起こしたり、チャートを清書したり、一時記録をコンピューター照合のためにデジタル化したりと、他に様々な作業があるとおっしゃる。
 私たちが日々培っている、口腔内を見る目・専門的歯科知識が必要とされる日が来る可能性があるならば、それに応えられるよう勉強しておきたい。

 さて、日常業務の中でのお話。。。
 生前記録作成にあたり、まず大切なのがカルテ一号用紙の歯式の記録である。ここは我々歯科衛生士が記録することも多い部分であるが、記載ミスで実際にはある歯を「なし」としてしまったら…、「ないはずの歯がご遺体にある」という状況では、照合の段階で矛盾が生じることとなる。あるいは、CR充填が時を経てCKになることはあっても、CKが健全歯に戻ることは決してありえない。
 こうしたエラーが照合作業に大きな影響を与えてしまうことを肝に銘じて、これを慎重に、正確に記載していくことは、私たちにも今すぐにできる身元確認作業への協力の第一歩となる。

 
 このように、装着してある金属の形まで記録することが望ましい。