警報前回の補足

                                                       

前回粘性を増した水は波が立ちにくい事をご報告したが、水に何かが混じる若しくは水面が異様な物で覆われた時に起きる波の形を物語る証言を一つご紹介しよう。私は若き頃地方の幼稚園、小学校を上演して回る人形劇団の一員であった、旅先での宿泊は 所謂木賃宿と言う事になる長い事同じ宿に泊り、其処の女将さんやご主人と親しくなったが、その家の主が旧軍体験者で有る事が判ると、その戦争体験を聞かせて頂いた 之は後にNHK アーカイブの仕事で聞き描き大平洋戦争のタイトルで絵と文章に纏めたが之も、その様にして聞いた話の一つである。                    

聞かせて下さったMさんは旧日本海軍の軽巡洋艦N乗り組みの一水兵で一番14cm砲の測的手であり、乗艦の沈没から生還した強運な方である。                                                            

 次にその時の会話を為るべく忠実に記す                                                 

私 Mさんは軽巡Nに乗って居られたんですか、艦隊の針路索敵や掃海、水雷戦隊の指揮なんかで さぞ苦労されたんでしょうね。                                                   

M そうさ 軽巡なんてのは艦隊の体の良い雑用係だよ、おまけに大正時代に造ったボロ船を無理に改造したから艦の排水量(トン数)が増えちまって喫水(船の水中に沈んでいる部分)深くなって そりゃあ難儀したもんだよ。                                               

私  そうすると、乾舷(船の水面からの舷側の高さ)が減って大きく波を被って、大揺れして大変だったんでしょうね。                                                                

M ああ 揺れるなんてもんじゃない、おまけに大波が艦の舷側に当ると、銅鑼を思い切り叩く様な音で眠れやしない、でもな一番困るのは揺れだよ、海が時化ている時、艦は錨をいれて機関を全開して、風上にホール(艦首)を 立てるちちゅう航法と言うのをやる、でもなもっと時化がひどくなると、海面に重油を撒く消波法ってのがある、之をやると 撒かれた所はうねりが低くなって海水がドロッとした様な感じになって、白波、三角波も起きにくくなるんだ。今 こんなことをしたら、公害って言われて、大目玉だろうな。 

                                                                                                          

私が此の採録対話で言いたい事其れは、Mさんの話に出てくる重油で粘った様になった海水と今の粘り気を増した水の状態の類似性である。又東京湾の埋め立て地や波打ち際で磯波の広がりが昔はレース生地模様を描いたのに、今は殆ど其れが起きないのも気になる点である。               

次に最近各地で観察した事例を2つご報告する 前文で汚染破壊された海水が稚魚や甲殻類の幼生に及ぼす影響について書いたが、同様の変化は淡水にも見られる様である例を挙げれば各地の小川や農業用水でアメリカザリガニの幼生が激減し、小鮒やめだかの群れが大きく減少している。私の住んでいる地域の汚濁で有名なA川や、D川なら未だしもT上水を水源とする、谷川の清流の様な水でさえ其の運命から逃れることは出来ない様である、何よりも一番我々にとって         

重大な事は此の汚染された水から作られた水道水を毎日飲んでいると言う事に尽きるであろう。         

次回予告 日本のもの造り、今其処に有る危機と題して私が20年間K市の児童館で工作教室のインストラクターをしていた経験を踏まえ、子供たちがどの様に器用さを失っていったのかを1970-2000年にかけて起きた数々の出来事を交えて出来る限り詳しく皆様にご報告する。