国民医療費は毎年3−4%増加し、2023年には48兆円に達しました。
一人当たりの国民医療費は65歳未満が21.8万円に対して65歳以上は79.7万円となり、65歳以上の国民医療費の構成割合は60%になります。
そこで、高齢者の自己負担割合を現役世代に近づけて公費負担と現役世代の負担を軽減するために、高齢者医療制度の見直しが行われています。
年齢階級別国民医療費(厚生労働省)
公的医療保険は社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的に制定、運用されています。
保健とは健康を守り保つことで、世界保健機構は健康を次のように定義しています。
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう。」
日本の公的医療保険は最高水準だと言われているにも拘らず、自殺原因・動機の半数近くが健康問題となっているのはなぜなのか?
自殺の原因・動機の年次推移(厚生労働省)
目的が達成できないのは制度に問題があると考えられます。
私が特に高齢になって痛感した日本の公的医療保険制度の問題点は次の通りです。
(1)病気になっても相談できる医師がいない。
(2)医療知識・情報のない個人に専門医の選定が任されている。
(3)関係者がアクセスできる形で個人医療情報が蓄積されていない。
個人医療情報のデジタル化(Medimo)
その結果としてあるのが現状で、無駄な医療費が発生すると同時に、専門医が患者に接する時間が不十分で、誤診の割合が高くなっていると判断されます。
(1)患者が安心のためにまず病院を選択したり、専門医をハシゴすることが常態化している。
(2)専門医は多くの初診患者を診察するため多忙で、一人の患者に割ける時間が短い。
(3)専門医は十分な個人医療情報がないまま、検査結果だけを基に診断を下している。
混雑する病院(毎日新聞)
医療事故における誤診の割合(厚生労働省、日本医師会)
アメリカでは公的保険制度(制度は法律で制定し、運用は民間の保険会社)を効率的に機能させるため、次のように設計・運用されています。
(1)被保険者はまず自分の家庭医(Primary care doctor)を選定する。
(2)家庭医は詳細な質問票、健康診断、問診により被保険者の医療情報データベースを作成する。
(3)家庭医は被保険者の病歴、病状に応じた検査を定期的に行い現状を把握して、生活指導し悩みの相談にも応じる。
(4)専門医、病院の受診・治療が必要と判断すれば家庭医がその手配を行い、専門医、病院はその結果を家庭医に報告する。
(5)医療情報は全てデジタル化されており、家庭医により作成された被保険者の医療情報データベースに自動的に付加される。
(6)被保険者コードを入力すれば専門医、病院も被保険者の医療情報データベースにアクセスできる。
(7)症状の安定した病気については家庭医が処方箋を出す。
アメリカの家庭医(Texas Health Resources)
アメリカにいた3年間、私は自分の健康につて心配することはありませんでした。
家庭医が専門知識に基づいて私の健康維持、増進に全力を尽くしてくれたからです。
日本に住んでいたときには、健康状態を把握し、病気を早期に発見するために健康保険適用外の高額な総合健康診断を年に一度は受けていました。
病気になると専門医の選定で迷い、受診時に過去の病歴・治療歴などを記憶に頼って説明しようとしても正確を期すのは困難で、専門医は検査漬けと言われるほど検査に頼ることになります。
総合健康診断(ヘルスチェック)
厚生労働省はやっと重い腰をあげ、医療の質の向上と持続可能な制度維持の課題としてこれらの問題に本格的に取り組む計画を発表しました。
しかし、家庭医の導入には医師の養成制度の問題、個人医療情報のデジタル化には初期コストと運用の負担、医療費の削減をもたらす改革には診療側(日本医師会、日本病院会など)の反発があり、実現には時間を要し困難を伴います。
公的医療保険制度の改革案について審議する社会保障審議会







