ノルサランヘ~君を愛してる~

第23夜【特別と代償】


彼女の目の前に居るユウキ自身が、人魚の姿をしていた。彼女自身、施設で資料を読んで、知っていたが、成功していたなど信じられない。けれど、百聞は一見にとは、このことを言うのだろうと彼女は思った。

『それが、あの施設でやっていた実験の産物…あなたの名前が最後だった…だから、特別で融通がきくのね』

「そうよ。ソニョは資料を見つけてたんだね。じゃあ、このマークのことも知ってるよね…わざわざ、アレンくんに言わなくてもよかったかなぁ…(苦笑)ねぇソニョ。実は私、この身体になって、感謝していることと悔いていることがあるの」
ユウキが海水から完全に上がると、不思議なことに、光と共に元の服装に戻った。
『感謝?(汗)』
すごい…魔法みたいだ…
「そう、感謝。実験の成功…いや…成功って言えるのか、わかんないけど。そのお陰で私は、他人以上の体力を手にし…今まで生きてこれた…」
本当は、ポーカー男の腕も振り払えるだけの腕力もあるのだと言う。けれど、彼は街のことを知らない為に、そうできなかったらしい。
『あなた病気だったの?』
まさか…そこまで一緒なの?…私も小さい時、病気になり入院していた。…骨髄移植で、今の命がある(汗)

彼女は、病気になったことがあった為に、異常として現れる、熱や気絶を恐れていた。病気の再発を予感させるから。
「そうよ…私は死ぬはずだった…何も残せずに、死ぬくらいならと両親が、あの収容所に私を入れた。けど…」
ユウキの話を、黙って聞く彼女。ユウキは、塞き止める物を失ったダムみたいに、まくし立てた。
「私はね、最後の実験台にして、最高の成功例。オリジナルとして、次に生かそうとしてた。だけど、調べてる最中に、科学実験の停止が言い渡されたの。あれは酷い調査だったっ。だから、実験を辞めても、それを知る人は、私を優遇したのよ…けど…そんなの全然、嬉しくなんかないっ。私を腫れ物にでも触るみたいに扱って!普通に、扱って欲しかったっ!!いや…いっそのこと、死んでしまえばよかったんだ…私なんかっ」

『そんなことっ(汗)・・・・・ねぇ、あなた以外には居なかったの?…実験台にされてしまった子は?』
病気の克復を代償に、普通の人として扱われなくなったんだ…それが、感謝と悔いていること…
「居たよ…でも今は、実験台にされなかった子"だけ"しか居ない…」

『え?(汗)』

「みんな…失敗作として実験中に、泡となって消えるか…一度だけ人魚の姿になって、二度目に泡となるかして、居なくなって逝ったのよっ」

『そんなっ!それじゃまるで…(汗)』

「そうよっ。人魚姫のお姫様のように消えちゃったのよ、私の前でっ!みんなっ、みんな!!(泣)」

『ユウキ…』
泣きじゃくるユウキを、慰めるように抱き締める彼女。そんな時…
「おぉーい!ソニョー、ユウキさぁん!!居ませんかぁ?」
アレンの声が聞こえてきた。
『ユウキ、アレンが探してる。ねっ、行こう?(微笑)』

「うん…」


こうして、二人を探すアレンと合流したのだった。病院に行ってから、宿に戻った彼女は、わかったことを皆に報告する。そして、アクマの出現率が高いことで、あの施設付近の捜索を強化することを提案した。アクマもイノセンスを探してるように思えたからだ…施設の中までうろついているのは珍しいから…。そんな話をしていると…
「あの…イノセンスとは関係ないんですが…ハグロさんの父親なんですが、先ほど亡くなられたそうです。病院に立ち寄った時に伺いましたので確かです(汗)」

「そんなっ!(汗)」

『大丈夫かなぁ…』
やっぱ、助からないんだ…この世界でも…

そう思う彼女。それから、部屋で休むまでは、そう時間はかからなかった。なのに、よほど疲れていたのか、ベッドに横になると、すぐに寝てしまう彼女。そして、夢のようなモノを見た…いや、忘れていた記憶…アクマを倒して海に沈んでからのだった。


彼女は、アクマを破壊すると、一旦は沈み、沖に流された。それが、あのポーカー男が見た最後。流された彼女は、最後の力で、対アクマ武器を伸ばし、自分を海水から上げた。いつまでも浸かっていたら、衰弱するのは目に見えていたから。しかし、前の任務から持ち越された傷を再び負傷した上に、足場のない海面下での戦い、波に流され、体力の限界だった。そして…気を失いかけ、海に沈んだ…。

ダメ…早く海面に上がらないと…でも力が…入ら、ない…

遠ざかる海面に手を伸ばすが、掴み返してくれる手はない。彼女が諦めかけた時、不意に、光に包まれた。驚いて、光の元を探すと、それは海底にあるようである。

なに?この感覚は?…感じたことのある、暖かな光…いや、いつも手元にある・・・・イノセンス?…ホントにあったの?

光に手を伸ばす彼女。しかし、その手を掴んだのは…
《ソニョ!…やっと見つけた…!》
人魚姿のユウキだった。ユウキの顔を見て、安心したのか、彼女は完全に気を失う。これが、ユウキに助けられるまでの、忘れていた記憶だ。

「ソニョっ、ソニョ!大丈夫ですか!?(汗)」

『ん…アレン?…私…』
夢?…でもあれは…
「うなされているようでしたので、勝手に入らせていただきました。大丈夫ですか?…顔色が…(汗)」

『ありがとう、アレン。でも、もう大丈夫だよ(苦笑)』

「本当ですか?…なにかあったら、言ってくださいね?」

『うん、大丈夫。…それより、やっと思い出したんだけど…私、イノセンスを見たみたいなの』

「本当ですか!?(びっくり)…それはどこでっ(汗)」

『溺れかけてる時に、海の底で…だから、自信がないんだ。本物なのか…』

「そうですか(汗)…では明日、ユウキさんに助けていただいた場所を聞いて、船を出してもらいましょう。…僕が潜って見てきます」

『そんなっ、危険だよっ!私が玉々(ギョクギョク)で潜るから…その方が速く潜れるし、上がっても来れるし…(汗)』

「いいえ!そんなこと、万全の状態ではないソニョに任せられませんっ。というか、任せたくありませんよ!…女性が活躍しているのに、僕が何もしない訳にはいきませんし!!…僕に任せてくださいっ!」

『アレン…』
アレンはどうやら、彼女を助ける為に港に来たのに、ユウキに先手を取られて、何もできなかったのが悔しいようだ。合流してからというもの、彼女をおんぶして病院に連れていったりと、彼女の補助をし続けている。変なところで頑固になると、直らないと知る彼女は諦め…
『わかった。でも、私は補助として参加するからね』
まったく、こういうところは子供なんだから(苦笑)
「はい!わかりましたっ」


明日の朝、ファインダーに話をすることにして、各々、休むことにした彼女とアレン。こうして、新たな一面を見せた1日が終わった。しかし、本当にイノセンスはあるのか?街の全貌が明らかにされていくのでした。


第23夜 END