ノルサランヘ~君を愛してる~

第12夜【水の流れる国】


彼女達は、噂の教会にたどり着いた。サザーランドが正確な場所を知っていたので、方向転換が一回で済み、速く着くことが出来たのだ。

『…廃墟の教会…』

「アイツらにとっては絶好の場所さ(汗)」

『早く行こうっ』
早歩きで教会に近づき、壊れかけた扉を開ける。中は日が落ちて来たせいで、薄暗かった。そして、廃墟らしく、蜘蛛の巣やホコリ、じめっとした感じがあり、床が軋む。しかし、中の物は、ほとんどが以前のまま残されているようだった。十字架の前に女神像があり、サーラは、その前に膝まずいている。ステンドグラスが割れているらしく、スポットライトが当たっているかのようだった。
「とりあえず、間に合ったみたいやな」

「あぁ」
安堵する二人を残し、彼女はサーラに近づいていく。
『サーラちゃん?こんなところで何してるの?(苦笑;)』

「なにって、神様に祈ってるの…ママとパパを返してくださいって…」

『なんでそんなことっ(汗)』
いや…聞きたくない…
「だって、ここで祈れば、願いが叶って、すぐにでもママとパパが帰って来るんでしょ?」

『それは違うっ!!!それはただの迷信…いえっ、それ以前のまやかしなの!…あなたも両親をあの機械の塊にしたいのっ!?』

「それでもっ、帰ってくるなら!!私はっ!(泣)」

『バカなこと言わないでっ!(怒)』
そう怒鳴り、サーラの頬を平手打ちする。
「ソニョ!?(びっくり)」

「ねぇちゃん、何するんや!?(びっくり)」
驚く二人には目もくれず、彼女は捲し立てる。
『サーラちゃんがアクマになったら、私達があなたを破壊しないといけないのよ!?…親しい者を破壊する辛さがあなたにわかる?…悲しくて辛くて…それでもっ、私達はエクソシスト!!…何があろうと、胸が張り裂けそうでもっ!アクマを破壊するのが使命なのよっ!?(泣)』
叩いたはずの彼女の方が先に、大粒の涙を流していた。それを見て…
「おねえ、ちゃん?・・・・うっ、うう……わぁ~ん!(泣)」
サーラも彼女の腕の中で泣き出す…憑き物が落ちたように…。そんな時…
「とんだ邪魔が入ったぜ。久々の材料が来たと思ったのによぉ」
上から声が降ってきた。目線を向けると、一匹のコウモリがいる。コウモリ型のゴーレムだ。
「てめぇらさえ来なけりゃ、伯爵様に連絡出来たんだけどなぁ」

「なんさ、お前っ!?」

「おっと、紹介が遅れたな。俺はボリー…ここの見張り人さ…(にやり)」
涙を拭い、ボリーというコウモリを睨む彼女。
『噂を聞き、ここへ願いに来た人を、アクマの材料として千年伯爵に受け渡す。それがあんたの役目…そうでしょ?…伯爵の手先っ』

「ご名答、お嬢さん(にんまり)」

『…お前みたいな奴が居るから…(ボソッ)…ありもしない噂を流したりさえしなければ…それにすがらず、回りの助けを借りて、強く生きられたはずなのにっ(怒)』
あちこちで流れる噂で、どれだけの人が、悲劇を生んでしまったのか…そんなことさえしなければ…ラビも、ダグもっ

怒りに震える彼女。
「お姉ちゃん?(汗)」
心配するサーラに、一瞬、微笑んでからサーラを背にしてボリーを睨んだ。
「ホント、バカだよなぁ…人間って。…目の前に、自分に都合のいいことが転がると、すぐに飛びついてくる」

『黙れっ!その口、閉じないとただじゃおかないよっ』

「…ソニョ…(汗)」
ラビは、いつもと違う彼女の様子に驚いていた。しかし、彼女はボリーを睨んだまま…
『でもまぁ…残念だったね。…サーラちゃんは渡さないし、あんたも二度と伯爵とは話せないようにしてあげるよっ』

「おぉ、威勢のいいお嬢さんだな。でも…それはどうかな…?見たとこ、そこのぬいぐるみは特殊だ。イノセンス絡みだろ?(にやり)」

「チッ、厄介なことになりそうさぁ(汗)…サザーランド、俺から離れるなよ…」

「フンッ、ゆうまでもないでぇ…あんちゃんが、守ってくれるんやろ…?(にっ)」

「…っ!(びっくり)・・・・おうよ!任せるさぁ♪(笑)」

「おいおい。まさか、俺だけだと思ってねぇだろなぁ?・・・・来いっ!」
ボリーの合図により、アクマが現れる。全てレベル1だ。
『…絶対、守ってみせる…』
イノセンス発動!

彼女は、対アクマ武器を構える。そして…
『あんたは私が破壊してやるっ!』
玉々(ギョクギョク)…メガ…!

ボリーのところまで飛び、瞬殺する。
「な…に…(汗)」
ボリーは派手な爆音を立てて吹き飛んだ。意外と綺麗に着地する彼女。
「ソニョ、大丈夫さ?(汗)」

『うん。大丈夫だよ(苦笑)…それより、アクマを破壊しないと…』

「そう…だな…(大丈夫には見えないさぁ)」
ラビの心配をよそに、アクマとの戦いが始まった。激しい戦闘のせいで、教会は次第に壊れていく。その時、空が曇っていることに気づいた。

雨が降るかもしれない…早く終わらせないと…

雨が降ると、戦いに影響が出かねないのだ。そんな時、サーラに向かって来る血の弾丸に気づくサザーランド。
「サーラっ、危ない!!!」
ラビの背から離れ、サーラの前に飛び込んだ。そして、弾丸を受けて吹っ飛ぶ。
「サザーランド!?」

「あ…あぁ…サザーランドっ」

『このぉ!(怒)』
彼女は、血の弾丸を撃ったアクマを破壊する。それが最後のアクマだった。
「サザーランドっ!?」
飛んでいったところに行くと、綿が出てしまっていた。そして、ピクリとも動かない。
『そんなっ、まさか!(汗)』
よく見ると、近くにイノセンスが転がっていた。そう、核が外れて動かなくなったのだ…ただのぬいぐるみに…。
「クソッ、俺は…(守るって約束したのにっ)」

「嫌だよっ、サザーランドぉ~!(泣)」

『こんなことって…』
サーラもイノセンスも守れたけど…サザーランドじゃない…私は無力だっ

雨が…降りだした…。壊れた教会に雨が降る。サザーランドは、いくらやっても動かなかった…イノセンスを戻しても…。そもそも、どういう仕組みだったのかわからない以上、直しようがないのだ。機械仕掛けならまだ、動いたかもしれない…気休めだけど、ララのように…。その夜、彼女は部屋で沈んでいた。
『私…ひどい奴だよね…悲しみに暮れてる子を殴ることしか出来ないなんて』
なんで、あんなこと…
「しかたないさぁ…あの時は、あぁするしかなかったさ…」

『ううん。絶対、他にも方法があったっ。だけど、私はっ、自分の思いだけで叩いてしまった』
落ち込む彼女の頭を、ラビは撫でる。
「気を落とすなって…さっき、ジジイから聞いたさぁ…お前は俺らよりも多くの悲劇を知ってるんさ。過去も未来も…だから…それを見たくなかっただけさぁ(微笑)」

『…ラビ…(苦笑)』
ラビの言葉に、少なからず、励まされる彼女。しかし、彼女の傷は、それだけではなかった。…そう、ダグのこと…。今回のことは、酷似しすぎていたのだ。また、彼女の他に、悲しみに暮れる者がまだいる。サーラは、またしても大切なモノをなくした。あんなことがあって、家に帰って来たサーラは、ずっと眠りについている。よほど疲れたのか…現実を受け入れたくないのか…それは、サーラにしかわからない。そして、サーラは夢を見ていた。サザーランドと会ったばかりの頃の。
「サーラ、俺の名前の由来、教えてやるで」

「え?なになに?(笑)」

「なんでも、水の流れる国でサザーランドなんやて」

「水の流れる国?(キョトン)」

「俺を作ってくれた奴の故郷なんやて。なんでも、水が豊富にあってな、見渡す限り水で、それは綺麗なんやと(笑)」

「わぁ~、見てみたぁい(微笑)」

「今度、一緒に行こうや(にっ)」
そこで夢が終わり、目を覚ました。起きたサーラの瞳には、涙が浮かぶ。
「サザーランド…あなたまで居なくならないでよ…(泣)」


人それぞれ、悲しみに暮れていた。悲しみが癒える日は来るのだろうか?予想できないことは、まだあるのでした。


第12夜 END