最近、小説を読んでいますか?

忙しい毎日を過ごしていると、本を開く時間は少しずつ減ってしまいます。

仕事を終えて家に帰り、夕食を済ませ、スマートフォンを眺めているうちに、気づけばもう寝る時間。

「今日は本を読もう」と思っていたのに、結局一ページも開かなかった――そんな夜もあります。

でも、小説には不思議な力があります。

たった数ページ読んだだけなのに、今いる場所とはまったく違う世界へ連れて行ってくれるのです。

今日は、そんな「小説のある時間」について書いてみたいと思います。

■ 駅のベンチに置かれていた一冊の本

これは、ある物語です。

主人公は、毎朝同じ電車に乗って会社へ向かう会社員。

起きる時間も、乗る電車も、駅で買うコーヒーも、ほとんど毎日同じでした。

特別に不満があるわけではありません。

けれど、「このまま同じ毎日が続いていくのかな」と、ふと思うことがありました。

ある雨の日。

仕事帰りの駅で電車を待っていると、ベンチの端に一冊の本が置かれていました。

古い紺色の表紙。

タイトルはありません。

忘れ物だと思い、駅員さんに届けようと手に取った瞬間、一枚の紙が本の間から落ちました。

そこには、こう書かれていました。

「この本には、まだ結末がありません。」

気になって最初のページを開くと、一人の人物の日常が書かれていました。

朝起きて、同じ電車に乗る。

駅でコーヒーを買う。

会社へ向かう。

主人公は驚きました。

そこに書かれていたのは、まるで自分自身の一日だったからです。

ページをめくる手が止まりません。

昨日の出来事。

一週間前の出来事。

子どもの頃に忘れていた小さな思い出まで書かれています。

ところが、本の真ん中から先は、すべて白紙でした。

最後に書かれていた文章は、たった一行。

「さて、明日から何をしますか?」

■ 物語の続きを決めるのは誰?

もし、こんな本を見つけたら、あなたならどうしますか?

翌日も同じ電車に乗るでしょうか。

それとも、いつもより一本早い電車に乗ってみるでしょうか。

普段は通らない道を歩いたり、気になっていた喫茶店に入ったりするかもしれません。

ずっと連絡していなかった友人に「元気?」とメッセージを送るのもいいでしょう。

大きな冒険をする必要はありません。

ほんの少し選択を変えるだけで、その日の物語は昨日とは違ったものになります。

考えてみれば、私たちの日常も小説に似ています。

昨日までのページを書き直すことはできません。

でも、次のページには、まだ何も書かれていません。

■ 小説を読むと、普通の毎日が少し違って見える

私が小説の面白さを感じるのは、本を閉じた「あと」です。

物語の中では何でもない場面だったのに、なぜかずっと心に残ることがあります。

雨の音。

夕方の商店街。

誰かが淹れてくれた一杯のお茶。

電車の窓から見えた夕焼け。

小説を読んだあとに同じ景色を見ると、それまで気づかなかったものが少しだけ特別に見えることがあります。

もしかすると小説とは、現実から逃げるためのものではなく、現実をもう一度面白く見るための「小さな窓」なのかもしれません。

ミステリーなら、「この人はなぜこんなことを言ったんだろう?」と考える。

ファンタジーなら、「もし本当にこんな世界があったら?」と想像する。

青春小説なら、忘れていた昔の気持ちを思い出す。

心温まる物語なら、身近な人の優しさに改めて気づく。

一冊の小説から受け取るものは、人によってまったく違います。

だから面白いのでしょう。

■ 「読む時間がない」という人こそ、10分だけ

長編小説を見ると、「最後まで読めるかな」と思うことがあります。

そんなときは、一気に読もうとしなくてもいいと思います。

寝る前の10分。

電車を待つ10分。

休日のコーヒータイムの10分。

一日に数ページでも、物語は少しずつ進んでいきます。

ドラマを一話ずつ見るように、小説も少しずつ楽しめばいい。

むしろ毎日少しずつ読むことで、「あの人物、このあとどうなるんだろう?」と考える時間まで楽しめます。

■ 今日という一日も、一つの物語

駅のベンチで見つけた、結末のない本。

もちろん、これは私が考えた架空の物語です。

けれど、白紙のページは誰にでもあるのかもしれません。

明日のページ。

来週のページ。

一年後のページ。

そこに何が書かれるのかは、まだ誰にもわかりません。

だからこそ、小説を読むことは面白いし、毎日を生きることも面白い。

今夜、少し時間があったら、一冊の小説を開いてみませんか?

知らない町へ行き、知らない誰かに出会い、まだ経験したことのない人生を数時間だけ歩いてみる。

そして本を閉じたら、自分自身の物語へ戻ってくる。

そのとき、いつもの部屋やいつもの帰り道が、昨日よりほんの少し違って見えるかもしれません。

さて。

あなたなら、明日のページに何を書きますか?

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